マーケティング予算の決め方とは?相場・配分・ROI最大化の実践ガイド

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カテゴリ: マーケティング予算・KPI

著者: 与謝秀作

マーケティング予算

「マーケティングにいくら使えばいいのか分からない」「予算の根拠を経営層に説明できない」——こうした悩みは、企業規模を問わず多くのマーケティング担当者が抱えています。予算が少なすぎれば成果が出ず、多すぎれば利益を圧迫します。重要なのは、売上目標から逆算し、施策ごとに期待リターンを見積もったうえで配分することです。

この記事では、マーケティング予算の基本的な考え方から、予算策定の具体的なステップ、業界別の相場観、施策別の費用目安、そしてROIを最大化するための配分テクニックまでを網羅的に解説します。

マーケティング予算とは

マーケティング予算とは、顧客の獲得・育成・維持に必要な活動に充てる費用の総額です。具体的には、広告出稿費、SEO・コンテンツ制作費、SNS運用費、ツール利用料、展示会・イベント費、外注費(代理店・フリーランス)、人件費の一部などが含まれます。

マーケティング予算は単なるコストではなく「投資」です。投じた金額に対してどれだけの売上・利益を生み出せるかという視点で管理することが、予算を有効に使う第一歩になります。

マーケティング予算の相場:売上の何%が目安か

マーケティング予算の一般的な目安として、売上高に対する比率がよく参照されます。業界や成長フェーズによって大きく異なりますが、大まかな水準は次の通りです。

  • BtoB企業全般:売上の3〜5%程度。既存顧客からのリピートが多い場合は低め、新規開拓が中心なら高めになる傾向
  • BtoC企業全般:売上の5〜10%程度。消費財やEC系はさらに高く10〜20%に及ぶケースもある
  • SaaS・IT企業:売上の15〜25%。特に成長期のスタートアップでは売上の30〜50%を投じることも珍しくない
  • 製造業:売上の1〜3%程度。技術力や既存取引関係に依存する度合いが大きいため低水準

ただし、売上比率はあくまで出発点です。自社の成長目標、競合の投資水準、LTV(顧客生涯価値)とCAC(顧客獲得コスト)のバランスを踏まえて調整する必要があります。

マーケティング予算の決め方:5つのステップ

予算策定で最も重要なのは、売上目標から逆算して必要な投資額を導き出すことです。「使える額」ではなく「必要な額」から考えるアプローチが、経営層への説得力にもつながります。

  1. 売上目標を確定する:年間の売上目標と、そのうちマーケティング起点で獲得すべき売上額を決める。営業が自力で作る売上と、マーケ施策経由の売上を分けて考える
  2. ファネルを数値化する:目標売上を達成するために必要な受注数→商談数→リード数→サイト訪問数を逆算する。各段階の転換率(CVR、商談化率、成約率)は過去実績を使う
  3. CPL・CPA目標を設定する:リード1件あたりの獲得コスト(CPL)や受注1件あたりのコスト(CPA)の目標を置く。LTV÷3〜5がCPA上限の目安になる
  4. 施策ごとの費用を見積もる:SEO、リスティング広告、SNS広告、コンテンツ制作、イベント、ツール費など、施策別に必要額を積み上げる。それぞれの期待CPLと獲得見込み数を添える
  5. 全体を調整して確定する:積み上げた総額と、売上比率から算出した予算枠を照合する。乖離がある場合は施策の優先順位を見直し、投資対効果の高い順に絞り込む

代表的な予算策定フレームワーク

マーケティング予算の決め方には、いくつかの代表的なアプローチがあります。自社の状況に合った方法を選ぶか、複数を組み合わせて妥当性を検証するのが実務的です。

売上比率法

前年度もしくは今期見込みの売上高に対して、一定の割合をマーケティング予算として確保する方法です。シンプルで経営層に理解されやすい反面、市場環境の変化や成長投資のニーズを反映しにくいデメリットがあります。安定期の企業に向いています。

目標逆算法(タスク法)

売上目標から逆算し、達成に必要なリード数・商談数・施策コストを積み上げて予算を算出する方法です。上記5ステップで紹介したのがこのアプローチです。根拠が明確なので説明力が高く、PDCAを回しやすいのが強みです。データがある程度蓄積された企業に最適です。

競合対抗法

主要競合のマーケティング投資額を推定し、それに対抗できる水準で予算を設定する方法です。広告出稿量やコンテンツ量、展示会出展頻度などから競合の投資規模を推測します。市場シェアの維持・拡大が重要なフェーズで参考になりますが、自社の独自戦略とは乖離しやすい点に注意が必要です。

利益ベース法

売上ではなく粗利益を基準に予算を設定する方法です。利益率の低い事業と高い事業が混在する企業で有効で、「利益に見合った投資」をコントロールしやすくなります。ただし成長投資には不向きで、短期的な利益最適に陥りやすい面もあります。

施策別マーケティング費用の目安

各施策の費用感を把握しておくと、予算配分の精度が上がります。以下は中小〜中堅企業における一般的な月額費用の目安です。

  • リスティング広告(Google/Yahoo!):月額20〜100万円。即効性が高く、CPAを管理しやすい。少額から始められるのが強み
  • SEO・コンテンツマーケティング:月額10〜50万円(内製の場合はツール費+人件費)。成果が出るまで3〜6ヶ月かかるが、長期的にはCPLが下がりやすい
  • SNS広告(Meta/X/LinkedIn):月額10〜80万円。BtoCならMeta・X、BtoBならLinkedInが中心。ターゲティング精度が高い
  • MA(マーケティングオートメーション)ツール:月額5〜30万円。リード管理、メール配信、スコアリングなどを自動化。HubSpot、Marketo、SATORI等が代表格
  • 展示会・セミナー:1回あたり50〜300万円。名刺獲得単価は高めだが、質の高い見込み客と直接接点を持てる。オンラインウェビナーなら大幅にコスト削減可能
  • 動画制作・運用:1本あたり10〜100万円。企業紹介、サービス説明、事例インタビューなど。YouTubeやLP埋め込みで長期間活用できる

マーケティング予算の配分:何にどれだけ割り振るか

予算総額が決まったら、次は配分です。配分を考える際に有効な「70:20:10の法則」を紹介します。

  • 70%:実績のある施策に投下する。過去にROIが検証済みのチャネル(例:リスティング広告、SEO)に安定的に配分する
  • 20%:成長が見込める施策に投下する。成果の兆しがある施策(例:コンテンツマーケティング、SNS広告)をスケールさせる
  • 10%:新しい施策の実験に使う。未検証だが将来性のあるチャネル(例:AI活用、インフルエンサー施策)をテスト的に試す

また、ファネルの段階ごとに予算を配分するアプローチも有効です。認知獲得(TOFU)に偏りすぎると「リードは増えるが売上につながらない」状態になり、逆に検討・購入段階(MOFU/BOFU)だけに集中するとパイプラインが枯渇します。自社のボトルネックがどの段階にあるかを把握し、重点配分するのが鍵です。

ROIを最大化するための予算管理のコツ

予算を組んで終わりではなく、運用しながら最適化し続けることでROI(投資対効果)は最大化されます。以下の3つのポイントを意識してください。

KPIを施策ごとに設定する

施策ごとに追うべき指標を明確にします。広告ならCPA・ROAS、SEOならオーガニック流入数・CVR、MAならメール開封率・商談化率など。全施策を「売上」だけで評価しようとすると、因果関係が曖昧になり改善が進みません。

月次で予実管理を行う

毎月、予算消化額と成果を突き合わせます。計画通りの消化ペースか、CPAは目標内に収まっているか、リード数は計画に対して進捗しているかを確認し、乖離があれば翌月の配分を調整します。四半期に一度は中期的な視点で見直しましょう。

小さく始めて素早くスケールする

新しい施策は、最初から大きな予算を投じるのではなく、小規模にテストしてCPAやCVRの見通しを立ててからスケールするのが鉄則です。期待値が見えた段階で「70:20:10」の20%枠から70%枠へ移動させることで、リスクを抑えながら成長チャネルを開拓できます。

マーケティング予算策定でよくある失敗

予算策定においてありがちな失敗パターンを把握しておくと、同じ轍を踏まずに済みます。

  • 前年踏襲で思考停止する:市場環境は年々変わるのに、予算配分だけ前年と同じでは機会損失が生まれる。最低でも施策別のROIを見直して配分を再検討する
  • 短期施策に偏りすぎる:リスティング広告のようにすぐ成果が見える施策だけに集中すると、長期的なブランド資産やSEO資産が育たず、CPAが年々上昇していく
  • 予備費を確保していない:市場の急変や新しい機会に対応できるよう、全体の5〜10%は予備費として確保しておく。年度末の予算消化に追われるより、柔軟に使えるバッファがある方が成果は出やすい
  • 営業との連携不足:マーケティングが獲得したリードが営業でフォローされず無駄になるケースは非常に多い。予算策定の段階からマーケと営業で目標とKPIを共有し、パイプライン全体で予算の効果を測る仕組みが必要

まとめ:マーケティング予算は「投資」として設計する

マーケティング予算は、「使える額を割り当てる」のではなく、「売上目標を達成するための投資額を逆算する」アプローチが成功の鍵です。業界の相場を参考にしつつ、自社のファネル数値をもとにCPL・CPA目標を設定し、施策別に費用を積み上げて配分する——このプロセスを踏むことで、予算の根拠が明確になり、経営層への説明力も格段に上がります。

予算は一度決めたら終わりではありません。月次で予実を確認し、四半期ごとに配分を見直し、年度末には全体のROIを振り返る。このサイクルを回すことで、マーケティング投資の効率は年々改善していきます。まずは自社の売上目標とファネル数値を整理するところから始めてみてください。

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