マーケティングファネルとは?AIDA・AISASなど主要モデル解説

「マーケティングファネル」は、見込み顧客が商品やサービスを認知してから購入・推奨に至るまでのプロセスを、上から下へと絞り込まれていく漏斗(じょうご)の形で表現したフレームワークです。マーケティング戦略を設計するうえで最も基本的な考え方の一つであり、施策の優先順位付けやKPI設計、組織間の役割分担まで、あらゆる場面で土台となる概念です。
本記事では、マーケティングファネルの基本構造から、パーチェスファネル・インフルエンスファネル・ダブルファネルといった主要な3つのファネル形状、AIDA・AIDMA・AISAS・DECAX・SIPS・5Aモデルなどの代表的な購買行動モデルとの関係、そしてBtoB/BtoCそれぞれの実務への落とし込み方までを体系的に解説します。
ファネル(funnel)とは英語で「漏斗(じょうご)」を意味します。マーケティングの世界でこの言葉が使われるのは、見込み顧客が認知から購買へと進むにつれて段階的に人数が絞り込まれていく様子が、上が広く下が狭い漏斗の形によく似ているためです。たとえば1万人が広告を目にしても、興味を持つのは1,000人、購入を検討するのは100人、実際に購入するのは10人——というように、段階を下るほどに対象者が減っていきます。
マーケティングファネルは、こうした「段階ごとに人数が減る」という現実を可視化することで、各段階で何をすべきか、どこに改善余地があるのかを明確にするための思考の枠組みとして機能します。単なる図ではなく、戦略立案・施策設計・効果測定のすべてを貫く共通言語と言えます。
マーケティングファネルが重要なのは、施策をバラバラに実行するのではなく「顧客プロセス全体を俯瞰して設計する」視点を与えてくれるからです。広告で認知を取れていても比較検討の材料が不足していれば購入に至りませんし、購入後のフォローが弱ければリピートや口コミは生まれません。ファネル全体で見ることで、ボトルネックがどの段階にあるのかが一目で分かります。
また、ファネル各段階を数値化することで、KPIツリーを設計しやすくなります。認知段階のKPIは「リーチ・インプレッション」、興味段階は「サイト訪問数」、検討段階は「資料請求数・問い合わせ数」、購入段階は「成約数・売上」、購買後は「リピート率・NPS」というように、段階ごとに測るべき指標が明確になり、データドリブンな改善サイクルを回せるようになります。
パーチェスファネル(Purchase Funnel)は、マーケティングファネルの最も基本的な形で、消費者が商品を認知してから購入に至るまでのプロセスを上から下へと描きます。一般的には「認知(Awareness)→興味・関心(Interest)→比較・検討(Consideration)→購入(Action)」の4段階で表現され、上に行くほど対象者が多く、下に行くほど少なくなる逆三角形の形をしています。
パーチェスファネルは「購入をゴールとした思考フレーム」であり、新規顧客獲得を主眼に置いたマーケティング設計に向きます。各段階での離脱率(コンバージョン率の逆)を見ることで、認知に問題があるのか、検討段階で離脱しているのか、購入直前で迷っているのかを把握でき、ボトルネック特定の出発点として機能します。
インフルエンスファネル(Influence Funnel)は、購入後の顧客行動を可視化するためのファネルで、パーチェスファネルとは逆に下が広がる三角形(または逆三角形を反転させた形)で描かれます。「継続購入→紹介→発信・拡散」という段階を経て、一人の顧客が新たな見込み顧客を生み出していく影響力(influence)の広がりを表現します。
SNSが普及した現代では、購入後の顧客が口コミやレビュー、SNS投稿を通じて他の見込み顧客の意思決定に大きな影響を与えるため、購入後のプロセスを単独のファネルとして設計する重要性が高まっています。インフルエンスファネルの背景には、後述するAISASモデルにおける「Share(共有)」の概念があります。
ダブルファネル(Double Funnel)は、パーチェスファネルとインフルエンスファネルを上下に組み合わせた砂時計型のファネルです。上半分で「認知から購入まで」を、下半分で「購入から推奨・拡散まで」を描き、購入を中心に据えて顧客プロセス全体を一気通貫で捉えます。
ダブルファネルの最大の利点は、新規獲得とロイヤル化の両方を同じフレームで管理できることです。購入後の顧客が拡散・推奨することで新たな認知が生まれ、再びファネル上部に流入する循環構造を意識した戦略設計が可能になります。BtoB/BtoCを問わず、LTV(顧客生涯価値)を重視する現代のマーケティングでは標準的な考え方として浸透しています。
AIDAは、1898年にアメリカの広告人エルモ・ルイスによって提唱された、最も古い購買行動モデルとされています。Attention(注意)→Interest(関心)→Desire(欲求)→Action(行動)という4段階で、消費者が広告に接してから購入するまでの心理プロセスを記述します。
AIDAの特徴は「Memory(記憶)」を含まないシンプルな構造で、欲求が生まれたらその場で行動するという、衝動買い的な購買に近いモデルです。テレビショッピングのタイムセールやスーパーの特売など、欲求と行動の間に時間がほとんど空かない場面で機能します。
AIDMAは、1920年代にサミュエル・ローランド・ホールが著書の中で提唱した購買行動モデルで、AIDAに「Memory(記憶)」を加えた5段階構造です。Attention(注意)→Interest(関心)→Desire(欲求)→Memory(記憶)→Action(行動)という流れで、欲求を持った後すぐに購入するわけではなく、一度記憶に留め、後日購入機会が訪れたときに思い出して行動するという、現実に近い購買プロセスを表現しています。
AIDMAは、テレビ・新聞・雑誌・ラジオといったマス広告が消費者接点の中心だった時代の標準モデルとして広く活用されました。記憶段階を意識することで、広告の繰り返し露出やブランディング施策の重要性が説明でき、自動車・住宅・保険など検討期間の長い高関与商材で特に有効です。新カテゴリ商品のように検索ワードがまだ存在しない領域でも、認知形成と欲求喚起をマス広告で行うAIDMA的アプローチが今も機能します。
AISASは、2004年に電通が提唱した購買行動モデルで、インターネット時代の消費者行動を反映するために設計されました。Attention(注意)→Interest(関心)→Search(検索)→Action(行動)→Share(共有)という5段階で、AIDMAから「Desire・Memory」を取り除き、代わりに「Search・Share」という消費者主導の行動を組み込んでいるのが最大の特徴です。
AISASの実務的なインパクトは大きく、現代のデジタルマーケティング設計の出発点として今も広く使われています。「Search段階でいかに見つけてもらうか」がSEO・リスティング広告・口コミサイト対策の根拠となり、「Share段階でいかに語ってもらうか」がSNS運用やレビュー獲得施策の根拠となります。AISASは、購入後の行動が次の見込み顧客を生むという循環構造を初めて明示したモデルでもあり、インフルエンスファネルやダブルファネルの理論的背景になっています。
AISCEASは、AISASに「Comparison(比較)」と「Examination(検討)」を加えた7段階のモデルです。Attention→Interest→Search→Comparison→Examination→Action→Shareという流れで、検索後すぐに購入するのではなく、複数の選択肢を比較し、十分に検討してから購入に至る現実的な購買プロセスを表現しています。
AISCEASは、価格.comや比較サイト・口コミサイトを多用する家電・旅行予約・保険・SaaSなどのカテゴリで特に有効です。市場が成熟し代替製品・類似製品が多い領域では、消費者は必ず比較検討を経るため、自社製品が比較表で選ばれるための情報設計(仕様・価格・レビュー・事例)が極めて重要になります。
DECAXは、2015年に電通が提唱したコンテンツマーケティング時代の購買行動モデルです。Discovery(発見)→Engage(関係構築)→Check(確認)→Action(行動)→eXperience(体験・共有)の5段階で構成され、AIDMAやAISASとは決定的に異なる「消費者起点」の構造を持ちます。
AIDMAやAISASでは企業の広告(Attention)から始まりますが、DECAXでは消費者自身の発見(Discovery)から始まります。SEO記事・SNS・YouTubeなどで「自分から有益な情報を探した結果として商品に出会う」という現代の行動様式を反映しているのが特徴です。企業がプッシュ型で押し売りするのではなく、有益なコンテンツで「見つけてもらい」、関係性を育てて購入につなげるという流れで、オウンドメディア・SEO中心の集客やBtoB SaaSのリード獲得と相性が良いモデルです。
SIPSは、2011年に電通が提唱したソーシャルメディア時代の購買行動モデルで、Sympathize(共感)→Identify(確認)→Participate(参加)→Share & Spread(共有・拡散)の4段階で構成されます。SNSでの共感起点で行動が始まり、購入という行為を「参加(Participate)」と捉え、さらに共有・拡散していくという、従来モデルとは大きく異なる発想を持っています。
SIPSが画期的なのは、購買そのものをゴールに置かず、「共感→共有」というコミュニケーションの輪を回し続けることをマーケティング活動の本質と捉える点です。ファッション・コスメ・飲食・エンタメなど、SNSでの共感や世界観共有が購買の決め手になるカテゴリで特に有効で、インフルエンサーマーケティングやUGC(ユーザー生成コンテンツ)施策の理論的背景になっています。
Dual AISASは、2015年にアタラ合同会社が電通プロモーション・デザイン局の協力のもと提唱したモデルで、AISASを「買うためのAISAS」と「広めるためのAISAS」の二重構造に発展させたものです。Interest(興味)を軸に、購入を目的とする従来のAISASフローと、拡散を目的とする「Activate(起動)→Interest(興味)→Share(共有)」フローが並走する構造になっています。
情報過多の現代では、注意や興味を持っても購入に至らず共有だけで終わるケースが増えています。Dual AISASはこの現実を捉え、「商品の魅力を伝える広告」と「拡散したくなるネタとしての広告」を別軸で設計するという発想を提供します。バイラルキャンペーンやSNS連動施策の設計に役立ちます。
5Aモデルは、マーケティングの父と呼ばれるフィリップ・コトラーが著書『マーケティング4.0』で提唱した現代型の購買行動モデルです。Aware(認知)→Appeal(訴求)→Ask(調査)→Act(行動)→Advocate(推奨)の5段階で構成され、最後のAdvocate(推奨)が他者のAsk(調査)に影響を与える循環構造を明示しています。
5Aモデルの特徴は、SNS時代の「他者の推奨が次の顧客の意思決定を左右する」現実を中核に据えている点です。購入直前の調査(Ask)段階では、ネットで商品情報・企業メッセージ・口コミ・評判を調べる行動が組み込まれており、企業発信よりも第三者の声が決め手になることを前提に設計されています。LTV重視・推奨重視の現代マーケティング戦略の基盤として広く用いられています。
BtoBでは、検討期間の長さと関与者の多さを反映して、より細かいフェーズで設計したファネルが用いられます。一般的には「認知→興味・関心→情報収集→比較検討→購入意向→商談→受注」といった段階を踏み、各段階でマーケティング・インサイドセールス・フィールドセールスが連携して見込み顧客を引き上げていきます。
BtoBファネルでは、各段階での見込み顧客の状態を「リード」「MQL(マーケティング有効リード)」「SQL(セールス有効リード)」「商談」「受注」として定義し、段階間のコンバージョン率と通過件数をKPIとして管理します。獲得したリードが最終的に受注に結びついたかを追跡することで、マーケティング投資のROIをより正確に評価できるようになります。
最初に、自社の商材特性とチャネル構成に合った購買行動モデルを選定します。情報収集をあまり行わない日用品ならAIDMA、検索行動が中心のEC・SaaSならAISAS、比較検討が長い高関与商材ならAISCEAS、コンテンツ起点のリード獲得ならDECAX、SNS拡散重視ならSIPSやDual AISAS、推奨ループ重視なら5Aモデル、というように、商材と顧客行動に応じて使い分けます。
実務では1モデルだけで完結することは稀で、「認知段階はAIDMA・検討段階はAISCEAS・購買後はDECAXのeXperience」といったように、フェーズごとに最適なモデルを組み合わせるのが現実的です。重要なのはモデルの正確性ではなく、自社の顧客行動を関係者全員が同じ言葉で語れる共通言語を持つことです。
選定したモデルに沿って、各段階の現状を数値で可視化します。認知段階なら広告リーチ・インプレッション・指名検索数、興味段階ならサイト訪問数・記事PV、検討段階なら資料請求数・問い合わせ数、購入段階なら成約数・売上、購入後ならリピート率・NPS・口コミ件数、というように、段階ごとのKPIを設定して数値を集めます。
過去の受注・購入データをもとに、典型的な顧客が「最初に接触した媒体」「検討で参考にした情報源」「購買決定の決め手」を時系列で書き出すと、数値化と同時に質的な顧客理解が深まります。営業へのヒアリングや顧客インタビューを5〜10件実施するのが理想です。
段階間のコンバージョン率を比較し、最も改善余地が大きいボトルネックを特定します。たとえば認知から興味への遷移が極端に低ければ広告クリエイティブやLP(ランディングページ)の問題、検討から購入への遷移が低ければ価格・事例・営業フォローの問題、というように、数値からどの段階に投資すべきかを判断します。
ボトルネックが見えたら、その段階に直接効く施策を設計します。認知不足ならディスプレイ広告・SNS広告・PR、興味段階の離脱ならコンテンツマーケティング・メルマガ、検討段階の離脱なら導入事例・ホワイトペーパー・無料トライアル、購入段階の離脱ならセールスコンテンツ・FAQ・チャットサポート、というように、段階ごとに有効な施策の引き出しは異なります。
ファネルは一度作って終わりではなく、継続的にモニタリングしながら改善サイクルを回します。月次で各段階のKPIをダッシュボード化し、想定値との差分を確認、ボトルネックの位置が変化していないかをチェックします。施策を実行したら必ず効果検証を行い、ファネル上の数値変化として把握する習慣をつけましょう。
また、市場環境や顧客行動は時間とともに変化するため、選定したファネルモデル自体の見直しも定期的に行うべきです。SNSの新興プラットフォーム登場、検索からAIアシスタント経由の情報取得への移行など、外部環境の変化に応じてファネルの形そのものをアップデートしていくことが、長期的な競争力につながります。
マーケティングファネルは、見込み顧客が認知から購入・推奨に至るまでのプロセスを段階的に整理し、施策設計と効果測定の土台となる思考フレームワークです。基本形のパーチェスファネル、購入後を捉えるインフルエンスファネル、両者を統合したダブルファネルという3つの形を押さえることで、新規獲得から既存顧客のロイヤル化まで一気通貫で戦略を設計できます。
AIDA・AIDMAというマス広告時代のモデルから、AISAS・AISCEASというネット時代のモデル、DECAX・SIPS・Dual AISASというSNSコンテンツ時代のモデル、そして5AモデルやBtoBファネルといった現代型のモデルまで、さまざまな購買行動モデルが時代背景に応じて生み出されてきました。重要なのは「どれが正解か」ではなく、自社の商材・顧客・チャネルに合うモデルを選び、組み合わせて使うことです。
ファネルを実務に落とし込むには、モデル選定→数値化→ボトルネック特定→継続改善という4ステップが基本です。マーケティング部門だけでなく、営業・カスタマーサクセス・経営層まで含めた全社共通言語としてファネルを運用することで、施策の優先順位が明確になり、データに基づく意思決定の質が大きく向上します。本記事を出発点に、自社のファネル設計に取り組んでみてください。

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