体験入社とは?制度がある企業一覧と活用のコツ【大人の職業体験ガイド】

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カテゴリ: お試し転職

著者: 与謝秀作

体験入社

「入社してみたら想像と違った」「職場の雰囲気が合わなかった」——転職後にこうした後悔を抱える人は少なくありません。厚生労働省の調査によれば、中途入社者の約3割が3年以内に離職しており、その主な理由は「仕事内容のミスマッチ」や「職場環境への不適応」です。

こうしたミスマッチを防ぐ手段として注目されているのが「体験入社」です。面接だけではわからない実際の業務内容や職場の雰囲気を、入社前に体験できるこの制度は、企業と求職者の双方にメリットがあります。

本記事では、体験入社の基本的な仕組みから、実際に制度を導入している企業の一覧、大人の職業体験サービス、そして体験入社を最大限に活用するコツまでを詳しく解説します。転職を検討中の方はもちろん、採用活動の改善を考えている企業担当者の方もぜひ参考にしてください。

体験入社とは?基本の仕組みを理解しよう

体験入社とは、企業への入社候補者が一定期間(1日〜数ヶ月)実際の職場で働くことで、業務内容や社風を体感できる制度です。選考プロセスの一環として最終面接の前に実施されるケースと、内定後に入社前の確認として行われるケースがあります。

体験入社では、配属予定のチームに加わり、実際の業務に近いタスクに取り組みます。チームミーティングへの参加、社員とのランチ、課題への取り組みなど、リアルな職場環境を体感できるのが特徴です。企業側は候補者の実務スキルや人柄を直接確認でき、候補者側は「自分に合った職場かどうか」を肌で感じることができます。

体験入社の期間と報酬

体験入社の期間は企業によって異なり、半日〜1日の短期型から、1週間〜数ヶ月の長期型までさまざまです。最も多いのは1日型で、2次面接の後に実施し、その日のうちに最終面接を行う企業もあります。

報酬については、入社時の想定給与を日割りで支給する企業もあれば、交通費のみ支給、あるいは無報酬の企業もあります。ただし、企業の指揮命令下で実際の業務を行う場合は、労働基準法上、賃金の支払いが必要となる点に注意が必要です。

インターンシップ・試用期間との違い

体験入社と混同されやすい制度として「インターンシップ」と「試用期間」があります。それぞれの違いを整理しましょう。

インターンシップは主に学生を対象としており、架空のビジネスケースや研修プログラムを通じて業界理解を深める目的で行われます。一方、体験入社は転職希望の社会人を対象とし、実際の業務に携わる点が大きな違いです。大人の職業体験としての体験入社は、より実践的な内容になります。

試用期間は、すでに雇用契約を結んだ後の期間であり、体験入社は入社前(雇用契約前)に行われるという点で根本的に異なります。試用期間中は正式な従業員として給与が支払われますが、体験入社は選考プロセスの一環として位置づけられることが一般的です。

体験入社のメリット【求職者側】

体験入社は求職者にとって多くのメリットがあります。大人の職業体験として、転職前の不安を解消する有効な手段です。

リアルな職場環境を事前に確認できる

求人票や面接だけでは見えない、職場の実態を体感できます。社員同士のコミュニケーションスタイル、オフィスの雰囲気、実際の残業状況、休憩時間の過ごし方など、入社後の日常を先取りして確認できるのは大きなメリットです。「思っていた仕事と違った」というギャップを入社前に防げます。

自分のスキルや適性を現場で試せる

体験入社では実際の業務に近いタスクに取り組むため、自分のスキルがその企業で通用するかどうかを実感できます。未経験の職種にチャレンジする場合も、職業体験を通じて適性を確認してから転職の判断ができるため、キャリアチェンジのリスクを軽減できます。

将来の同僚との相性を確かめられる

一緒に働くことになるチームメンバーやマネージャーと直接交流できるため、人間関係の相性を事前に確認できます。ランチや雑談を通じて、社員の人柄や価値観を感じ取ることで、自分がチームになじめるかどうかの判断材料になります。

体験入社のメリット【企業側】

体験入社は採用する企業側にも大きなメリットをもたらします。

書類や面接では見えない実力を評価できる

履歴書や面接でのやりとりだけでは、候補者の実務能力やコミュニケーションスタイルを正確に把握するのは困難です。体験入社を通じて、実際の業務に取り組む姿勢、問題解決能力、チームとの協働スキルなどを直接観察できます。研究データでも、実務試験(体験入社に相当するプログラム)は入社後のパフォーマンスとの相関が高いことが示されています。

早期離職を防止できる

体験入社を経て入社した人材は、事前に職場環境を理解した上で入社を決断しているため、入社後のミスマッチが発生しにくくなります。結果として早期離職率の低下につながり、採用コストの削減にも寄与します。体験入社を導入している企業では、従来の採用方法と比較して離職率が改善したという報告も多くあります。

現場社員を採用プロセスに巻き込める

体験入社では配属予定チームの社員が候補者と直接接するため、現場の意見を採用判断に反映できます。人事部門だけでなく、実際に一緒に働くメンバーの視点を取り入れることで、組織全体として納得感のある採用が実現します。

体験入社制度を導入している企業一覧

ここでは、実際に体験入社制度を導入している代表的な企業を紹介します。業種や体験内容はさまざまなので、自分の関心に合った企業をチェックしてみてください。

Chatwork株式会社

ビジネスチャットツールで知られるChatworkは、設立当初から体験入社を導入しています。期間は1日で、2次面接の後、最終面接の前に実施されます。体験入社当日は、マネージャーが用意した課題の解決策を考え、現場社員にヒアリングしながら発表を行います。昼休みには社員とランチに行く時間も設けられており、カジュアルな交流を通じて社風を体感できます。体験入社を行ったその日に最終面接が実施される、スピーディーな選考プロセスが特徴です。

東建コーポレーション

中途採用の応募者を対象に、選考の一環として最長2日間の体験入社を実施しています。実際の営業活動への同行やオフィスでの業務体験を通じて、仕事の進め方や顧客との関係性をリアルに体感できるプログラムが組まれています。

エン・ジャパン株式会社

転職サイト「エン転職」などを運営するエン・ジャパンでは、「体感転職」という名称で体験入社プログラムを実施しています。候補者が実際の業務を体験することで、入社後のミスマッチを減らすことを目的としています。

Retty株式会社

グルメプラットフォーム「Retty」を運営する同社は、従業員数が100名を超えた後も体験入社を継続しています。組織が拡大しても、候補者とのミスマッチを防ぐために体験入社を重要な採用プロセスとして位置づけている好例です。

Globee株式会社

教育スタートアップのGlobeeでは、「1日体験入社」と「リモート体験入社」の2種類を用意しています。1日体験入社は転職を前提とした候補者向け、リモート体験入社は今の仕事を続けながら参加できる転職潜在層向けの制度です。リモート体験入社は約1ヶ月〜最長1年と長期にわたり、Slackなどのアカウントを付与して実際の業務に近いタスクに取り組みます。現職を辞めずに新しい職場を試せる画期的な仕組みといえるでしょう。

ソニックガーデン

「納品のない受託開発」で知られるソニックガーデンも、体験入社を採用プロセスに組み込んでいます。エンジニア採用では特に、フリーランスという働き方が広まる中で「入社して働くことの価値」を確かめるために、面接だけでは足りないという考え方から体験入社を重視しています。

大人の職業体験ができるサービス

特定の企業の体験入社に限らず、大人が気軽に職業体験できるサービスも増えています。「今の仕事でいいのかな」と悩んでいる方や、キャリアの選択肢を広げたい方に向けた、大人の職業体験サービスを紹介します。

仕事旅行社

2011年設立の仕事旅行社は、100種類以上の職業体験プログラムを提供する大人向け職業体験サービスの先駆けです。半日〜1日の短期プログラムが中心で、イルカトレーナー、宮大工、左官職人、映像翻訳家など、普段は接点のない職種を気軽に体験できます。参加者の年齢層は10代から60代以上まで幅広く、社会人がキャリアを見つめ直すきっかけとして活用されています。また「おためし転職」という、支援金をもらいながら職業体験できる転職支援サービスも運営しています。

ココロミル

「あらゆる職場を1日体験」をキャッチフレーズに、関東を中心に多彩な大人の職業体験プログラムを提供しています。1時間から半日程度で体験できるため、忙しい社会人でも参加しやすいのが魅力です。サービス業、営業職、製造業のほか、宮大工体験など珍しいプログラムも用意されています。

サンカク(リクルート)

リクルートが運営する社会人向けインターンシップのマッチングサービスです。現在の仕事を続けながら他社の現場に参加し、自分のスキルや経験を試すことができます。転職目的だけでなく、異業種体験やスキルアップを目的とした参加も増えており、社会人の職業体験としての活用が広がっています。

PROJECT INDEX

学生だけでなく社会人向けの募集も豊富なインターンシップ紹介サービスです。地方の課題に取り組む企業・団体でのプログラムが中心で、住み込みの求人なども掲載されています。長期(3ヶ月程度)のプログラムが多いため、じっくりとキャリアを考えたい方に向いています。

体験入社で不採用になることはある?

結論から言うと、選考プロセスの一環として体験入社が行われる場合、不採用になる可能性はあります。体験入社は「お試し」ではなく、企業にとっては重要な評価の場です。

企業は体験入社を通じて、業務への取り組み姿勢、コミュニケーション能力、チームとの相性、実務スキルなどを総合的に評価します。面接での印象が良くても、実際の業務での振る舞いが期待と異なれば、不採用の判断が下されることもあります。

一方、内定後に実施される体験入社の場合は、評価が悪かったことを理由に内定を取り消されることは基本的にありません。あくまで入社前の相互理解を深める場として位置づけられています。

なお、体験入社をしたからといって必ず入社しなければならないわけではありません。候補者側からも、体験を通じて「合わない」と感じた場合は、選考や内定を辞退することが可能です。

体験入社を成功させる7つのコツ

体験入社の機会を最大限に活かすためのポイントを紹介します。

1. 事前に確認したいポイントをリストアップする

体験入社の限られた時間を有効に使うため、事前に確認したいことをリスト化しておきましょう。実際の業務内容、チームの雰囲気、残業の実態、評価制度、キャリアパスなど、面接では聞きづらいことも体験入社の場であれば自然に確認できます。

2. 積極的にコミュニケーションを取る

体験入社中は遠慮せず、積極的に社員に話しかけましょう。ランチの時間や休憩時間は、フランクに質問できる貴重なチャンスです。社員の働き方に対する本音や、会社の良いところ・課題を直接聞くことで、より正確な判断ができるようになります。コミュニケーション力も企業側の評価ポイントになっていることを意識しましょう。

3. 「評価される側」であることを忘れない

体験入社は相互理解の場ですが、選考の一環である以上、企業側も候補者を評価しています。遅刻や服装の乱れはもちろん、業務への取り組み姿勢、質問の質、メモを取る習慣なども見られています。通常の面接以上に、仕事に対する熱意や誠実さが伝わるよう心がけましょう。

4. 職場環境を五感で観察する

業務内容だけでなく、オフィスの雰囲気にも注意を払いましょう。社員同士の会話のトーン、デスク周りの整理整頓具合、会議の進め方、上司と部下の関係性など、何気ない日常の中に企業文化が表れます。「ここで毎日働きたいか」という視点で、職場環境を五感で感じ取ることが大切です。

5. 与えられた課題には全力で取り組む

体験入社中に出される課題やタスクには、自分の実力を最大限に発揮して取り組みましょう。完璧な結果を出す必要はありませんが、課題に対するアプローチの仕方、わからないことを素直に質問できるか、チームメンバーと協力して進められるかといったプロセスが評価のポイントになります。

6. 報酬・契約条件を事前に確認する

体験入社に参加する前に、報酬の有無、交通費の支給、秘密保持契約(NDA)の必要性、万が一の事故・怪我に対する保険の有無などを確認しておきましょう。特に数日以上にわたる体験入社の場合は、現職との調整も必要になるため、日程や条件をしっかり擦り合わせておくことが重要です。

7. 体験後は振り返りを必ず行う

体験入社が終わったら、感じたことや気づきをすぐに書き出しましょう。業務内容は想像通りだったか、人間関係はどうだったか、自分の強みは活かせそうか、不安に感じた点は何か——これらを整理することで、冷静な判断ができるようになります。複数の企業で体験入社を行う場合は、比較検討にも役立ちます。

体験入社を導入する企業が知っておくべきポイント

企業が体験入社制度を導入・運用する際に押さえておくべきポイントも解説します。

受け入れ部署との事前調整を徹底する

体験入社では、まったく面識のない候補者が突然職場に加わります。受け入れ部署との事前調整が不十分だと、現場が混乱し、候補者への印象も悪くなりかねません。体験入社の目的、当日のスケジュール、候補者に任せる業務内容、メインで対応する社員の指名など、関連部署と十分にすり合わせておくことが不可欠です。

目的に沿ったプログラムを設計する

体験入社のプログラムは、採用の目的に合わせて設計しましょう。社風とのマッチングを重視するならチームミーティングやランチの時間を多めに確保し、実務スキルを見たい場合は具体的な課題を用意するなど、評価したいポイントに応じてプログラムを組み立てることが重要です。

法的な配慮を忘れずに

体験入社中に候補者が企業の指揮命令の下で実際の業務を行う場合、労働基準法上の「労働者」に該当し、賃金の支払い義務が発生する可能性があります。また、業務上知り得た情報の取り扱いについて秘密保持契約を締結する、事故や怪我への対応方針を明確にするなど、法的なリスクに備えた準備が必要です。

よくある質問(FAQ)

Q. 体験入社に給料は出ますか?

企業によって異なります。想定給与の日割りを支給する企業、交通費のみ支給する企業、無報酬の企業があります。ただし、企業の指揮命令の下で実際の業務を行う場合は、法律上賃金の支払いが求められます。参加前に必ず条件を確認しましょう。

Q. 体験入社後に辞退はできますか?

はい、体験入社をしたからといって必ず入社する義務はありません。体験を通じて「自分には合わない」と判断した場合は、選考や内定を辞退することが可能です。辞退する場合は、できるだけ早く丁寧に意思を伝えましょう。

Q. 体験入社の服装はどうすればいいですか?

事前に企業から指定がある場合はそれに従いましょう。特に指定がない場合は、ビジネスカジュアルが無難です。IT企業やスタートアップなどカジュアルな服装の会社であっても、初回は清潔感のあるきちんとした装いで参加するのがおすすめです。

Q. 在職中でも体験入社に参加できますか?

多くの企業が在職中の方にも配慮したスケジュールを組んでいます。平日1日の有給休暇を使って参加するケースが一般的ですが、土日に実施する企業や、リモート体験入社のように現職を続けながら参加できる形式を用意している企業もあります。

Q. 大人が職業体験できる場所はありますか?

特定企業の体験入社以外にも、大人の職業体験を提供するサービスが増えています。仕事旅行社やココロミルでは1時間〜1日の短期プログラムで多様な職種を体験でき、サンカクやPROJECT INDEXでは社会人向けインターンシップを探すことができます。転職を前提としない、純粋なキャリア探索としても活用できるのが大人の職業体験の魅力です。

まとめ:体験入社で「入社後のミスマッチ」をゼロに

体験入社は、企業と求職者の双方にとって、入社後のミスマッチを防ぐ強力な手段です。面接や求人票だけではわからない「本当の職場の姿」を知ることができるため、より確信を持って転職の意思決定ができるようになります。

体験入社制度を導入する企業は年々増えており、Chatwork、東建コーポレーション、エン・ジャパン、Rettyなど、業種を問わず広がっています。また、仕事旅行社やココロミルといった大人の職業体験サービスを活用すれば、転職活動の前段階としてキャリアの方向性を探ることも可能です。

転職は人生の大きな決断です。体験入社や職業体験を通じて、自分に合った職場を見つけ、後悔のないキャリア選択をしてください。

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