固定残業代とは?基本給・時間数・超過分で求人票を読む方法と計算例

固定残業代は、一定の時間外労働などに対する賃金を、あらかじめ定額で支払う仕組みです。「みなし残業代」と呼ばれることもあります。月給の総額だけを見ると、通常の勤務に対する賃金と残業分の支払いが混ざり、求人を比べにくくなります。
この記事では、日本の求人票・内定条件書で固定残業代を確認する順番と、内訳・不足額の計算例を説明します。時間外労働そのものの判定は、法定内残業と時間外労働の違いで確認してください。
最初に見るのは3つの項目
固定残業代を採用する募集では、固定残業代を除いた基本給、対象時間数・金額等の計算方法、超過分の追加支払いを確認します。「月給○万円、残業代込み」という説明だけでは内訳が分かりません。
確認すること | 求人票で探す記載 | 不明な場合の質問 |
|---|---|---|
通常の賃金 | 固定残業代を除く基本給 | 月給のうち基本給はいくらですか |
固定部分 | 金額、対象時間数、対象となる労働の種類 | 時間外・休日・深夜のどれを含みますか |
不足・超過分 | 別途支給する旨と精算方法 | 実際の計算額が固定額を超えた場合、どう支払いますか |
営業手当など別の名前でも、実態が固定残業代なら確認が必要です。反対に、手当の名前だけを見てすべて残業代だと判断することもできません。求人票の説明と、契約時の労働条件通知書を照合しましょう。
同じ月給29万6,000円でも内訳は違う
例えば、次の2つの提示を比べます。いずれも月額の税・社会保険料控除前の金額で、ほかの手当や賞与は含めない場合です。
提示 | 基本給 | 固定残業代 | 月額合計 |
|---|---|---|---|
A | 25万6,000円 | 法定時間外20時間分として4万円 | 29万6,000円 |
B | 29万6,000円 | なし。残業代は別途支給 | 29万6,000円+発生した残業代 |
同じ月額の数字でも、通常勤務に対する賃金と残業時の支払いは異なります。さらに所定労働時間、賞与の算定方法、手当の条件も合わせて比べます。「基本給が違えば賞与額も必ずこの差になる」とは限らず、会社の算定規定を確認します。
20時間分4万円の計算を確かめる
Aの例で、割増計算の基礎となる賃金は基本給25万6,000円のみ、1か月平均所定労働時間は160時間とします。対象は月60時間以下の通常の法定時間外労働だけで、深夜・法定休日労働はなく、割増率は25%の場合です。
- 基礎となる1時間当たり賃金:25万6,000円÷160時間=1,600円。
- 時間外1時間分の賃金:1,600円×1.25=2,000円。
- 20時間分:2,000円×20時間=4万円。
この計算では、月給総額29万6,000円をそのまま基礎額として割ることはしません。一方、ほかに算入すべき手当があれば、基本給だけでは計算できません。月平均所定時間も、どの職場も160時間という意味ではありません。所定労働時間と月平均の計算を参考に、会社の根拠を確認してください。
同じ前提で実際の法定時間外労働が25時間なら、必要額は5万円です。固定額4万円との差額1万円を追加する必要があります。時間数だけでなく、適用率や基礎単価の違いによって固定額が不足する場合もあるため、実際に必要な金額と比べます。
残業しない月も、20時間働く義務がある?
固定残業代は、実際の残業の有無にかかわらず定額を支払う仕組みです。上のAの条件で通常どおり1か月勤務し、対象残業が12時間だったからといって、「20時間に足りない8時間分」を当然に差し引くものではありません。欠勤や月途中の入退社などの賃金計算は、別に契約・規定を確認します。
また、20時間分という表示は、その時間まで必ず残業するという約束や、会社が無制限に残業を命じられる根拠にはなりません。残業命令の根拠や36協定、上限規制、実際の勤務時間の管理は別に必要です。
「みなし残業代」と、一定時間働いたものと扱う「みなし労働時間制」も別の仕組みです。名称が似ていても、固定残業代があるだけで勤怠記録が不要になるとは考えないでください。
説明と実際の支払いが違う場合
次のような場合は、求人票、契約書、賃金規程、勤怠記録、給与明細をそろえて確認します。
- 固定残業代を除く額や、固定額の対象が説明されない。
- 「超過しても一切追加しない」と説明されている。
- 実際の時間・単価・割増率で計算すると不足がある。
- 深夜・休日分を含むといわれるが、内訳や充当の方法が不明。
記載不足だけで契約全体の結論を出すのではなく、どの支払いが何に対応するのかを確認します。不明点や不足が解消しない場合は、労働基準監督署などへ資料とともに相談できます。
質問例:「月給29万6,000円のうち、基本給25万6,000円、時間外20時間分4万円という理解で合っていますか。基礎単価と月平均所定時間、対象を超えた分と深夜・休日分の支払方法を、書面で教えてください」。
固定残業代の有無だけで職場を決めない
固定残業代があることだけで、残業が多いとも少ないとも判断できません。配属予定の部署の通常月・繁忙月の実績、勤怠の修正方法、超過分が明細のどこに出るかを聞きましょう。制度がない会社でも、正しく支払われているかは別に確認する必要があります。
年俸提示を受けた場合は年俸制の支払い方、体験や面談を通じて確かめたい場合はお試し転職の確認項目も参考に、書面と実際の運用を比べてください。
出典:厚生労働省:固定残業代と募集時の明示 / 厚生労働省:基本給と固定残業代の区別・不足額 / 厚生労働省:固定残業代の記載例 / 厚生労働省:割増賃金の基礎 / 厚生労働省:労働時間・休日




