マーケティング予算案の作り方|計算例と承認用テンプレート

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カテゴリ: マーケティング予算・KPI
著者: 与謝秀作
マーケティング予算案は、希望する金額を並べた表ではなく、事業目標・必要な施策量・費用・判断条件を結び付ける提案書です。承認者が知りたいのは、何を達成するために、どの仮定で、いくら使い、どこで見直すかです。
まず売上目標を新規顧客と既存顧客に分け、新規分を受注数、商談数、リード数へ逆算します。その後、広告費だけでなく制作費・運用費・社内工数を積み上げ、営業が対応できる件数かを確認します。以下は実績ではなく、説明用の架空例です。
売上から必要リード数まで逆算する
例として、対象年度の新規受注売上1億円、1件当たり受注額200万円、商談からの受注率20%、有効リードからの商談化率25%を仮定します。受注率と商談化率を取り違えないことが重要です。
段階 | 計算 | 必要数 |
|---|---|---|
新規受注 | 1億円÷200万円 | 50件 |
商談 | 50件÷20% | 250件 |
有効リード | 250件÷25% | 1,000件 |
獲得費用 | 1,000件×有効リード単価8,000円 | 800万円 |
ここでいう有効リードは、対象企業・連絡可能性などの基準を満たし、重複と既存顧客を除いたものです。単価の分母も同じ定義にします。資料ダウンロード総数の単価を使うと、必要費用を過小に見積もる場合があります。
この計算は、獲得した集団が評価期限までに商談・受注へ進む前提です。商談化まで2か月、受注までさらに3か月かかるなら、年度末に獲得したリードの売上を同年度に全額見込めません。既存パイプラインの寄与と新規獲得分を分け、営業の対応枠も月別に確認します。
広告費以外を含む費用明細を作る
費目 | 架空の年間予算 | 根拠の置き方 |
|---|---|---|
有効リード獲得の媒体・施策費 | 800万円 | 1,000件×8,000円。対象と期間を明示 |
コンテンツ・LP制作 | 120万円 | 本数・単価・納品範囲 |
ツール | 60万円 | 利用者数・契約期間・追加料金 |
運用・分析の社内工数 | 120万円 | 対象時間×社内の配賦単価 |
合計 | 1,100万円 | 同じ費用を複数の行へ計上しない |
外注費に制作が含まれる場合は制作費を重複させません。見積書、過去の同条件の実績、担当者の工数見積もりを添付し、確定額と仮定を区別します。売上の何%を使うかは整合性を確認する補助軸であり、すべての企業に適用できる最適比率ではありません。
標準案と下振れ案を並べる
条件 | 標準案 | 下振れ案 |
|---|---|---|
有効リード数 | 1,000件 | 800件 |
商談化率 | 25% | 20% |
商談数 | 250件 | 160件 |
受注率 | 20% | 15% |
受注数 | 50件 | 24件 |
平均受注額 | 200万円 | 200万円 |
受注売上 | 1億円 | 4,800万円 |
下振れ案は、費用を1,100万円使っても単価や転換率が悪化した場合の例です。件数だけを変えて率を都合よく固定せず、どの仮定に弱いかを見ます。獲得数の不足が主因なら施策の配分、商談化の低下なら対象条件や営業への引き渡し、受注の低下なら案件の質や提案を点検します。
ROIとROASを混同しない
別の小さな例で、広告費100万円、帰属売上1,000万円、投資控除前の粗利益率50%、追加のマーケティング費用なしとします。ROASは売上÷広告費=1,000%。ROIは(粗利益500万円−投資100万円)÷100万円=400%です。「売上が広告費の10倍」はROASの説明です。
GoogleのROIの説明も、収益と費用の関係を区別しています。実際の予算審査では、制作・運用・人件費を含める範囲を決めます。すでに投資を差し引いた利益から同じ費用を再び引かないでください。また、広告へ帰属した売上が、広告によって純増した売上とは限りません。
承認用の1ページ要約
項目 | 記入例・記入欄 |
|---|---|
決裁を求める内容 | 年間1,100万円。四半期ごとの見直し条件を付けて申請 |
目的 | 新規受注売上1億円。既存顧客分は別予算で管理 |
前提 | 単価200万円、商談化25%、受注20%。各根拠資料を添付 |
実行責任 | マーケ責任者__、営業責任者__、費用確認__ |
代替案 | 対象市場を限定/既存施策を継続/外注範囲を変更 |
主要リスク | 営業対応枠不足、獲得単価上昇、受注時期の遅延 |
評価日 | __年__月__日。費用と成熟した獲得集団を確認 |
見直し条件 | 合意した上限費用・有効リード条件・営業対応期限を外れたら新規投下を再審査 |
見直し条件は、すぐに成果が出ないという理由だけで止める基準にしません。検証期間と受注までの時間を事前に合意し、データ不足なら不足として報告します。提出前には、計算の連続性、営業能力、費用の重複、仮定の根拠、承認後の更新担当を確認してください。資料の形式だけで承認が保証されることはありません。
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