試用期間の給料は下げてもいい?減額が違法になるラインと入社前の確認方法

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カテゴリ: 転職の不安・課題解決, 働き方
著者: 与謝秀作
試用期間中の給料を本採用後より低く設定すること自体は、違法ではありません。ただし適法となるのは、入社前にその金額が労働条件として明示されている場合に限られます。入社後に一方的に下げる、最低賃金を下回る、といったケースは違法です。
この記事では、試用期間の賃金について「どこまでが合法で、どこからが違法か」の線引きと、入社前に確認しておくべき項目を整理します。試用期間そのものの仕組みは試用期間とは?お試し転職との違い・知っておくべき権利で解説しています。
試用期間中の給料が低いこと自体は違法ではない
労働基準法には「試用期間中の賃金を本採用後と同額にしなければならない」という規定はありません。賃金額は労使の合意で決まるため、試用期間中だけ基本給を低くする、あるいは一部の手当を支給しないという設計も、契約として成立していれば有効です。実際、飲食・小売・製造などでは試用期間中の時給を数十円下げる運用が広く見られます。
適法になる条件は「入社前の明示」
労働基準法15条は、賃金の額や計算方法を労働契約の締結時に書面等で明示するよう会社に義務づけています。賃金は「絶対的明示事項」であり、口頭説明だけで済ませることはできません。したがって、試用期間中と本採用後で賃金が変わるなら、その差も含めて入社前に書面で示されている必要があります。労働条件通知書に「試用期間3か月・その間の基本給◯◯円」と記載があれば適法、記載がないのに入社後に下げられたなら違法、という判断になります。
求人票の金額と労働条件通知書が違うとき
求人票に書かれた金額は「見込み」であり、それだけで契約内容が確定するわけではありません。ただし職業安定法により、求人票の内容から労働条件を変更する場合、会社は変更点を求職者に明示する義務を負います。求人票では月給28万円だったのに労働条件通知書では試用期間中24万円、という差があるなら、署名する前に理由と本採用後の金額を確認してください。ここで説明を濁す会社は、入社後の条件変更にも同じ姿勢で臨む可能性があります。
減額が違法になる4つのライン
「試用期間だから」で正当化できない領域があります。次のいずれかに当てはまるなら、金額の合意があっても違法の可能性が高くなります。
- 最低賃金を下回っている:都道府県ごとの地域別最低賃金は試用期間中の労働者にも適用されます。下回る契約はその部分が無効となり、差額の支払い義務が生じます。
- 事前の明示なく入社後に下げた:労働条件の不利益変更にあたり、本人の同意がなければ認められません。
- 残業代や深夜・休日の割増賃金を払わない:割増賃金の支払い義務に試用期間の例外はありません。「研修中だから残業代は出ない」は通りません。
- 社会保険に加入させない:健康保険・厚生年金の加入要件を満たすなら、入社日から加入させる義務があります。「本採用後から」とする運用は誤りです。
最低賃金の減額特例には労働局長の許可が要る
最低賃金法には、試の使用期間中の人などについて最低賃金を減額できる特例が置かれています。ただしこれは会社が自由に使える仕組みではなく、都道府県労働局長の個別許可が必要で、減額できる幅にも上限があります。許可を得ずに最低賃金を下回る金額を支払っていれば、単純な最低賃金法違反です。提示額が地域の最低賃金を割っているなら、まず許可の有無を確認してください。
賃金以外で、試用期間中も変わらないもの
待遇差を説明されると「試用期間中は権利も制限される」と受け取りがちですが、実際に変えられる範囲は限られています。
- 年次有給休暇:入社日から6か月継続勤務した時点で発生します。試用期間もこの勤続期間に通算されるため、「試用期間は勤続年数に入らない」という説明は誤りです。
- 労災保険:雇用形態や試用期間の有無に関係なく、業務中・通勤中の負傷は補償の対象です。
- 解雇のルール:試用期間中の解雇は通常より広く認められる余地がありますが、自由ではありません。入社から14日を超えて働いた後は解雇予告または予告手当も必要です。詳しくは試用期間中にクビになる理由と対処法をご覧ください。
入社前に確認しておく5項目
内定承諾の前、遅くとも労働条件通知書に署名する前に、次の5点を確認してください。すべて口頭ではなく書面で残すのが基本です。
- 試用期間中の基本給と本採用後の基本給が、それぞれ金額で明記されているか
- 支給されない手当があるか(住宅手当・資格手当など)、あるならいつから支給されるか
- 社会保険の加入日が入社日になっているか
- 賞与の算定期間に試用期間が含まれるか、初回賞与の支給時期はいつか
- 試用期間の延長条項の有無と、延長時の賃金の扱い
額面と手取りの差でも印象は大きく変わります。提示額から実際に受け取れる金額を把握しておきたい場合は年収とは?手取り・額面・所得との違いもあわせて確認してください。
条件面の不安は「入社前に働いてみる」で減らせる
書面を確認しても、実際の残業の付き方や評価の運用までは分かりません。おためし転職では、入社を決める前に実際の職場で働き、体験報酬を受け取ったうえで判断できます。試用期間の賃金差に不安があるなら、そもそも「試してから決める」という順番に変える方法もあります。仕組みはお試し転職とは?サービス比較と始め方で解説しています。
試用期間の給料に関するよくある質問
Q. 試用期間中はどのくらい下がるのが一般的ですか?
そもそも差を設けない会社も多く、設ける場合でも1割前後にとどまるのが一般的です。2割を超える差や、基本給ではなく大半の手当を止めるかたちの減額は、水準として説明を求めてよい範囲です。
Q. 入社後に「試用期間中は◯円」と言われました。従う必要がありますか?
労働条件通知書にその記載がなければ、契約内容は通知書のほうです。まず書面を確認し、記載と違う額が支払われているなら差額を請求できます。会社と話がつかない場合は、勤務先を管轄する労働基準監督署に相談してください。
Q. 試用期間中は交通費が出ないと言われました。違法ですか?
通勤手当の支給は法律上の義務ではなく、就業規則や労働契約の定めによります。したがって支給しないこと自体は直ちに違法とは言えません。ただし、求人票に「交通費支給」と書かれていたのに支給されないなら、条件の相違として説明を求められます。
Q. 給料が低いまま本採用後も上がりませんでした。
労働条件通知書に本採用後の金額が明記されていれば、その金額を支払う義務があります。明記がなく「能力に応じて決定」等の記載にとどまる場合は交渉の余地が残るため、まず評価の根拠を確認しましょう。改善が見込めないなら、条件を明示する会社への転職を検討する段階です。
まとめ|争点は「金額」ではなく「明示されているか」
試用期間中の減額は、事前に明示され、最低賃金を上回っていれば適法です。逆に言えば、入社後に一方的に下げる、最低賃金を割る、割増賃金や社会保険を省くといった行為は、試用期間を理由に正当化できません。判断の起点は常に労働条件通知書であり、署名前の確認がそのまま自分を守る手段になります。
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※本記事は一般的な法令の考え方を整理したものです。個別の事案の判断は事情により異なるため、具体的なトラブルは労働基準監督署や弁護士等の専門家にご相談ください。




