ABM(アカウントベースドマーケティング)とは?戦略・導入手順・事例
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大量のリードを集めて確度の高い案件を追う従来のBtoBマーケティングでは、大型エンタープライズ企業との商談化がなかなか進まない——。そんな課題を解くアプローチとして、国内外のBtoB企業で急速に普及しているのが「ABM(アカウントベースドマーケティング)」です。ターゲットとなる企業(アカウント)を起点に、マーケティングと営業が一体となってパーソナライズされた施策を展開する手法であり、大型案件獲得・受注単価向上・LTV最大化を狙う企業にとって標準的な戦略となりつつあります。本記事では、ABMとは何かという基本から、従来のマーケティングとの違い、代表的な3つの型、導入の6ステップ、実務で効く戦術、成功事例までを体系的に解説します。
ABM(アカウントベースドマーケティング)とは
ABMとは「Account Based Marketing(アカウントベースドマーケティング)」の略で、自社にとって戦略的に重要な企業(アカウント)をあらかじめ特定し、その企業に対してマーケティングと営業が一体となってパーソナライズされた施策を集中的に展開するBtoBマーケティング手法を指します。「1つの企業=1つの市場」と捉え、企業単位で戦略を設計するのが最大の特徴です。
ABMの概念自体は2000年代初頭からBtoB調査機関のITSMAが提唱していましたが、国内で本格的に普及し始めたのは2010年代後半以降です。背景には、MA・SFA・CRM・インテントデータなどのテクノロジー進化により、企業単位で行動データを捕捉し、関与者ごとに最適な情報を届けることが現実的になったという環境変化があります。現在では、大型エンタープライズ案件を狙う国内BtoB企業の多くがABMを戦略の中核に据えるようになっています。
ABMを端的に言い換えるなら、「広く浅く」ではなく「狭く深く」の発想でBtoBマーケティングを設計する方法論です。年間の受注目標を数百社の特定ターゲットで達成することを前提に、1社あたりへの投下リソースを大きくし、個別最適化された体験を提供することで、受注率・受注単価・顧客生涯価値(LTV)を最大化することを狙います。
ABMが注目される背景
ABMが近年BtoBマーケティングの主流アプローチになりつつある背景には、事業環境と技術環境の両面で構造的な変化があります。
エンタープライズBtoBの重要性の高まり
SaaS・ITサービス・BtoB製造業などの分野で、「数百件の中小案件」より「数十件の大型案件」の獲得が売上の大部分を決めるパレート構造がより顕著になっています。少数の大型顧客への依存度が高まるほど、ターゲット企業を特定して戦略的に攻略するABM型のアプローチが合理的になります。
マーケティングと営業の連携ニーズ
BtoBの現場では長年、「マーケティングが獲得したリードを営業が追わない」「営業が追っている企業にマーケがアプローチしていない」といった部門間の断絶が課題とされてきました。ABMはターゲット企業を両部門で合意することから始まるため、マーケ・営業・カスタマーサクセスが自然と同じ方向を向くレベニューチーム化の推進力にもなります。
テクノロジーの進化
インテントデータ(購買意欲を示すWeb上の行動データ)、MAツール、CDP、ABM専用プラットフォーム、LinkedInなどの企業単位のターゲティング広告といったテクノロジーが成熟したことで、「どの企業が・いま・何に関心を持っているか」を可視化しながら企業単位で施策を設計することが可能になりました。データと自動化の土台が整ったことで、かつては人力に頼っていたABMを効率的に運用できるようになっています。
ABMと従来のマーケティング(リードベース型)の違い
ABMと従来型のBtoBマーケティングは、ファネルの描き方そのものが逆向きになると言われます。違いを理解することで、自社にABMが合うかどうかの判断がしやすくなります。
従来型のマーケティング(リードベース型・デマンドジェネレーション型)は、「まず広くリードを集め、その中から確度の高いリードを絞り込んで営業に渡す」という逆三角形のファネルで進みます。入口の広さが成果を左右するため、広告・SEO・展示会・セミナーで大量のリードを集める活動が中心になります。
これに対しABMは、「まず狙うべきターゲット企業を特定し、その企業内の関与者を広げながら受注へ育てる」という正三角形のファネルで進みます。入口が狭く出口が広い、いわば逆向きのファネル設計です。量より質、個社への深いアプローチを重視するため、リード数ではなく「ターゲット企業の商談化率・受注率・受注単価」が主要KPIとなります。
両者は対立するものではなく、商材の特性や成長ステージに応じて使い分けるのが実務的です。中小企業向け・単価の低い商材ではリードベース型が有効で、エンタープライズ向け・高単価・長期契約の商材ではABMが力を発揮します。多くの成熟したBtoB企業は、両者をハイブリッドで運用し、リードベース施策で広くリードを捉えつつ、戦略アカウントにはABMで深く攻めるという併用戦略を取っています。
ABMの3つの型(Strategic / Lite / Programmatic)
ABMはすべてのアカウントに同じ深度で取り組むものではありません。ITSMAが提唱する分類をベースに、ABMは一般に3つの型に整理され、投下リソースとスケール(対象企業数)のバランスで使い分けます。
One-to-One ABM(Strategic ABM)
数社〜数十社の超重要アカウントに対して、完全個別にカスタマイズされた施策を展開する最も深い型です。企業ごとに専任のアカウントチーム(マーケ・営業・カスタマーサクセス)を組成し、専用のプレイブック・パーソナライズドLP・個社向けイベント・経営層へのエグゼクティブプログラムなどを設計します。1社あたりのリターンが極めて大きい戦略顧客を対象に、時間とコストを惜しまず投下するのが特徴です。
One-to-Few ABM(ABM Lite)
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