Android Identifier(AAID/Advertising ID)とは?仕組みと取り扱い

アプリ広告の配信や効果測定を担当していると、必ず出てくるのが「Android Identifier(AAID/広告ID)」という言葉です。これはAndroid端末ごとに割り当てられる広告用の識別子で、どの広告を見た人がアプリをインストールしたのかを結びつける、モバイル広告計測の土台になっています。一方で、ユーザーが自分でリセット・削除できる仕組みや、法規制上の取り扱いルールも整備されており、扱いを誤ると計測が壊れるだけでなくコンプライアンス上の問題にもなります。本記事では、AAIDの仕組み、他のAndroid識別子との違い、実務での用途、取り扱いのルール、そして2026年時点での最新動向までをわかりやすく解説します。
AAID(Android Advertising ID)とは、Google Play開発者サービスが提供する、広告用途に限定された端末単位の識別子です。「38400000-8cf0-11bd-b23e-10b96e40000d」のようなUUID形式の文字列で、同じ端末上であればどのアプリから取得しても同じ値が返ります。
最大の特徴は、ユーザーが端末の設定画面からいつでもリセット(新しい値に変更)でき、さらに広告IDそのものを削除できる点です。IMEIやシリアル番号のような変更不可能なハードウェアIDと違い、「ユーザーがコントロールできる、広告のための使い捨て可能なID」として設計されています。
AAID、GAID(Google Advertising ID)、ADID、広告ID——これらはすべて同じものを指します。Googleの公式ドキュメントでは「advertising ID」または「AAID」、広告業界の現場では「GAID」が使われることが多い、という程度の違いです。ツールやレポートによって表記が揺れるため、社内で呼称をそろえておくと混乱を防げます。
AAIDのiOS版に相当するのがIDFA(Identifier for Advertisers)です。役割はほぼ同じですが、同意の取り方が根本的に異なります。iOSはATT(App Tracking Transparency)により、アプリがIDFAを使うには明示的なオプトイン(許可のポップアップ)が必須です。対してAndroidは、初期状態では広告IDが利用可能で、ユーザーが能動的にオプトアウトする方式を採っています。
この違いにより、一般にAndroidのほうが識別子の取得率は高く保たれています。iOSとAndroidで計測できる範囲が異なるため、両OSの数値を単純合算して比較すると判断を誤りやすい点に注意が必要です。
Androidには複数の識別子が存在し、それぞれ用途と制約が定められています。混同すると規約違反につながるため、違いを押さえておきましょう。
原則はシンプルで、広告目的ならAAID、それ以外の分析や不正検知にはApp Set IDを使う、という使い分けになります。
AAIDはOS本体ではなくGoogle Play開発者サービスが管理しており、アプリは専用のAPIを通じて値を取得します。取得時には広告IDの文字列と併せて、ユーザーが広告のパーソナライズを拒否しているかどうかのフラグも返ります。実務上は、広告SDKや計測SDK(AppsFlyer、Adjustなど)が内部で取得しているケースがほとんどです。
なお、Google Play開発者サービスが搭載されていない端末(一部の中国メーカー端末やAmazonのFireタブレットなど)では、AAIDは取得できません。
ユーザーは端末の設定から広告IDをリセットでき、その時点で新しい値が発行されます。過去の行動履歴との紐付けは切れるため、同一ユーザーが別人としてカウントされることになります。
さらにユーザーが広告IDの削除を選んだ場合、Android 12以降の端末(およびAndroid 13以降を対象とするアプリ)では「00000000-0000-0000-0000-000000000000」というゼロだけの文字列が返ります。これは実質的なオプトアウトの意思表示であり、この値を受け取った事業者はターゲティングに利用してはならず、保持している関連データの削除も求められます。ゼロ値を「不明なユーザー」として扱い続ける実装は、ポリシー違反になり得ます。
Android 13(API 33)以降を対象とするアプリが広告IDを利用するには、マニフェストにAD_ID権限(com.google.android.gms.permission.AD_ID)を宣言する必要があります。宣言を忘れると、ユーザーがオプトアウトしていなくても取得値がゼロ埋めになり、広告の計測が突然機能しなくなります。
「アップデート後になぜかインストール計測が合わなくなった」という相談の多くは、この宣言漏れが原因です。ユーザーへの確認ダイアログは表示されない通常権限なので、開発側でしか気づけない点にも注意が必要です。
Google Playのデベロッパーポリシーでは、広告IDの利用について明確な制限が設けられています。特に重要なのは次の3点です。
広告IDは、単体では特定の個人を識別できないため個人情報には該当しないと整理されるのが一般的ですが、個人情報保護法の「個人関連情報」にあたります。提供先で他の情報と照合され個人データとして扱われることが想定される場合、提供元は本人の同意が得られていることを確認する義務があります。DMPや広告プラットフォームへIDを連携する際は、この確認手続きが必要になります。
加えて、電気通信事業法の「外部送信規律」により、利用者の端末に記録された情報を外部へ送信する場合には、その内容や送信先を通知・公表する必要があります。SDK経由で広告IDが外部に送られるケースも対象となり得るため、プライバシーポリシーの記載を実態に合わせて更新しておきましょう。
海外配信を行う場合は、EUのGDPRが広告IDをオンライン識別子として個人データに含めており、原則として事前の同意取得が求められる点にも留意が必要です。具体的な運用は自社の法務担当や専門家に確認してください。
数年前まで、業界の共通認識は「AAIDはPrivacy Sandboxに置き換えられ、いずれ廃止される」というものでした。GoogleはTopics APIやAttribution Reporting APIといった、識別子に依存しない仕組みへの移行を進めていたためです。
しかし2025年10月17日、Googleは採用が広がらなかったことなどを理由に、Privacy Sandboxの主要APIをChrome・Androidの双方で廃止すると発表しました。Topics、Protected Audience、Attribution Reportingはいずれも段階的に終了し、AAIDを置き換える予定だった枠組みは事実上なくなっています。2026年7月時点で、AAIDは引き続き利用可能です。
ただし、これは「識別子依存を続けてよい」というお墨付きではありません。ユーザーによるオプトアウトとゼロ埋めの仕組みは従来どおり動いており、各国の規制も同意取得を強める方向で変わっていません。強制的な移行期限がなくなった今は、腰を据えて計測基盤を整備できる猶予期間と捉えるのが現実的です。
日本の個人情報保護法では、広告ID単体は個人情報ではなく「個人関連情報」として整理されるのが一般的です。ただし会員IDやメールアドレスと紐付ければ個人データとなり、第三者提供時には同意確認が必要になります。EUのGDPRでは、広告IDはオンライン識別子として個人データに含まれる扱いです。
できます。端末の「設定」からGoogle関連の広告設定を開くと、広告IDのリセットと削除が可能です。メニューの名称や階層はAndroidのバージョンやメーカーによって異なりますが、設定内の検索で「広告」と入力すると見つけやすいでしょう。
2026年7月時点で、公表されている廃止予定はありません。置き換えを担う予定だったPrivacy Sandboxの主要APIが2025年10月に廃止されたため、当面はAAIDが使われ続ける見通しです。とはいえプラットフォーム方針は変わり得るため、最新の公式情報を定期的に確認することをおすすめします。
Android Identifier(AAID/広告ID)は、Google Play開発者サービスが発行する広告専用の端末識別子で、ユーザーがリセット・削除できる点に大きな特徴があります。アトリビューション計測やリターゲティング、フリークエンシー制御を支える一方、永続IDとの紐付け禁止やオプトアウトの尊重、AD_ID権限の宣言といった実務ルールが伴います。
Privacy Sandboxの廃止によって強制的な移行期限は消えましたが、プライバシー保護の流れそのものは変わっていません。まずは自社アプリの権限宣言とゼロ埋め比率を確認し、識別子に依存しない計測手法とファーストパーティデータの整備を並行して進めることが、これからの数年を安定して戦うための備えになります。