オリエンシートの書き方|代理店・制作会社への依頼精度を上げるテンプレート
代理店や制作会社に仕事を依頼したとき、上がってきた提案が思っていたものと違う——このすれ違いの多くは、提案側の力量不足ではなく、依頼側が渡した情報の量と質に原因があります。それを防ぐための文書がオリエンシートです。この記事では、オリエンシートの基本から、RFPや企画書との違い、記載すべき10項目、そのまま流用できるテンプレート、そして提案の質を上げる書き方のコツまでを整理します。
オリエンシートとは
オリエンシートとは、広告代理店や制作会社に施策を依頼する際、背景・目的・ターゲット・予算・スケジュールなどの前提情報をまとめた文書です。「オリエンテーション(向きを定めること)」が語源で、実務では「オリエ」「オリエ資料」「ブリーフ」とも呼ばれます。
重要なのは、オリエンシートは「作ってほしいものの仕様書」ではないという点です。伝えるべきは「何を作るか」ではなく「なぜこれをやるのか、どうなれば成功なのか」です。手段を細かく指定しすぎると、パートナーが持つ知見や、もっと良い代替案を引き出せなくなり、外部に頼む意味が薄れてしまいます。
RFP・企画書・要件定義書との違い
似た文書がいくつかあるため、作成者と目的で整理しておきます。
- オリエンシート:発注側が作成。課題と目的を伝え、提案を引き出すための文書。広告・制作・PRなどクリエイティブ領域で使われることが多い。
- RFP(提案依頼書):発注側が作成。目的は同じですが、選定プロセスや評価基準、非機能要件まで含むより形式的な文書。システム開発や大規模なコンペで使われる。
- 企画書:受注側が作成。オリエンシートを受けて、解決策を提示する文書。
- 要件定義書:発注先が決まった後、契約に基づいて「何を作るか」を確定させる文書。多くは受注側が作成する。
実務上はRFPとオリエンシートの境界は曖昧で、企業によっては同じものを指すこともあります。名称にこだわる必要はなく、提案側が判断するのに十分な情報が揃っているかで考えてください。
オリエンシートがないと何が起きるか
口頭だけで依頼した場合に起きがちな問題は、おおむね次の4つです。
- 提案の方向がバラつく:各社が異なる前提で考えるため、並べて比較できない。
- 手戻りが増える:デザインが上がってから「想定と違う」となり、工数も日程も広がる。
- 社内の意見が後から割れる:前提を文書化していないため、提案を見た段階で目的の解釈が分かれる。
- 評価が属人的になる:基準がないため、好みや声の大きさで採否が決まる。
オリエンシートを作る手間は1〜2日程度ですが、これらの手戻りを防げることを考えれば、投じる価値のある工数です。
オリエンシートに記載すべき10項目
業種や施策の種類を問わず、次の10項目を押さえておけばオリエンシートとして成立します。
1. 案件概要
案件名、依頼内容の一行要約、オリエ実施日、提案期限を冒頭に置きます。受け取った側が、まず何の話なのかを数秒で把握できるようにしておきます。
2. 企業・ブランド概要
事業内容、主力商品、市場でのポジション、ブランドが大切にしている価値観を簡潔に。特に新規のパートナーに対しては、ここを省くと提案が一般論になりがちです。既存のブランドガイドラインがあるなら添付します。
3. 背景と現状の課題
なぜ今この施策に取り組むのかを、事実と数値で書きます。「問い合わせが前年比30%減」「新規ユーザーの初回継続率が低い」といった具体性があれば、提案側は打ち手を絞り込めます。アクセス解析や売上データ、顧客の声など、手元にある材料は可能な範囲で共有します。
4. 目的とゴール(KGI・KPI)
この施策で何を達成したいのかを、測れる形で書きます。「認知を上げたい」ではなく「半年で指名検索数を1.5倍」、「問い合わせを増やしたい」ではなく「月30件から60件へ」。数値が置けない場合でも、「どうなっていれば成功とみなすか」の状態を言語化しておきます。
5. ターゲット
属性情報だけでなく、その人がどんな状況で、何に困っていて、どこで情報を探すのかまで描きます。BtoBなら、実際に使う人と決裁する人が違うケースが多いため、どちらに向けた施策なのかを明示しておくと提案がブレません。
6. 商品・サービスの強みと訴求ポイント
競合と比べて何が優れているのか、顧客が実際に評価している点はどこかを書きます。作り手側の思い込みと顧客の評価はずれていることがあるため、レビューや問い合わせ内容など、事実に基づく情報を添えられると提案の精度が上がります。
7. 依頼範囲と成果物
どこからどこまでを依頼するのかを明示します。企画のみなのか、制作・実施・運用まで含むのか。あわせて、対象外の範囲(原稿は自社で用意、撮影は別発注など)も書いておくと、見積もりの前提が揃います。
関連記事
Web制作・広告施策の見積もりの見方|人月計算の落とし穴と妥当性チェック
Web制作・広告施策の見積もりはなぜ比較しづらいのか。見積書で確認すべき欄、人月計算の仕組みと費用相場の目安、陥りやすい6つの落とし穴、妥当性を判断するチェック項目を解説します。

