オリエンシートの書き方|代理店・制作会社への依頼精度を上げるテンプレート

代理店や制作会社に仕事を依頼したとき、上がってきた提案が思っていたものと違う——このすれ違いの多くは、提案側の力量不足ではなく、依頼側が渡した情報の量と質に原因があります。それを防ぐための文書がオリエンシートです。この記事では、オリエンシートの基本から、RFPや企画書との違い、記載すべき10項目、そのまま流用できるテンプレート、そして提案の質を上げる書き方のコツまでを整理します。
オリエンシートとは、広告代理店や制作会社に施策を依頼する際、背景・目的・ターゲット・予算・スケジュールなどの前提情報をまとめた文書です。「オリエンテーション(向きを定めること)」が語源で、実務では「オリエ」「オリエ資料」「ブリーフ」とも呼ばれます。
重要なのは、オリエンシートは「作ってほしいものの仕様書」ではないという点です。伝えるべきは「何を作るか」ではなく「なぜこれをやるのか、どうなれば成功なのか」です。手段を細かく指定しすぎると、パートナーが持つ知見や、もっと良い代替案を引き出せなくなり、外部に頼む意味が薄れてしまいます。
似た文書がいくつかあるため、作成者と目的で整理しておきます。
実務上はRFPとオリエンシートの境界は曖昧で、企業によっては同じものを指すこともあります。名称にこだわる必要はなく、提案側が判断するのに十分な情報が揃っているかで考えてください。
口頭だけで依頼した場合に起きがちな問題は、おおむね次の4つです。
オリエンシートを作る手間は1〜2日程度ですが、これらの手戻りを防げることを考えれば、投じる価値のある工数です。
業種や施策の種類を問わず、次の10項目を押さえておけばオリエンシートとして成立します。
案件名、依頼内容の一行要約、オリエ実施日、提案期限を冒頭に置きます。受け取った側が、まず何の話なのかを数秒で把握できるようにしておきます。
事業内容、主力商品、市場でのポジション、ブランドが大切にしている価値観を簡潔に。特に新規のパートナーに対しては、ここを省くと提案が一般論になりがちです。既存のブランドガイドラインがあるなら添付します。
なぜ今この施策に取り組むのかを、事実と数値で書きます。「問い合わせが前年比30%減」「新規ユーザーの初回継続率が低い」といった具体性があれば、提案側は打ち手を絞り込めます。アクセス解析や売上データ、顧客の声など、手元にある材料は可能な範囲で共有します。
この施策で何を達成したいのかを、測れる形で書きます。「認知を上げたい」ではなく「半年で指名検索数を1.5倍」、「問い合わせを増やしたい」ではなく「月30件から60件へ」。数値が置けない場合でも、「どうなっていれば成功とみなすか」の状態を言語化しておきます。
属性情報だけでなく、その人がどんな状況で、何に困っていて、どこで情報を探すのかまで描きます。BtoBなら、実際に使う人と決裁する人が違うケースが多いため、どちらに向けた施策なのかを明示しておくと提案がブレません。
競合と比べて何が優れているのか、顧客が実際に評価している点はどこかを書きます。作り手側の思い込みと顧客の評価はずれていることがあるため、レビューや問い合わせ内容など、事実に基づく情報を添えられると提案の精度が上がります。
どこからどこまでを依頼するのかを明示します。企画のみなのか、制作・実施・運用まで含むのか。あわせて、対象外の範囲(原稿は自社で用意、撮影は別発注など)も書いておくと、見積もりの前提が揃います。
上限額または想定レンジを提示します。制作費と媒体費、初期費用と運用費用を分けて示すと、比較しやすい提案が戻ってきます。予算を伏せると、実現不可能な提案や過剰な提案が混ざり、比較工数が無駄に増えます。
提案期限、選定時期、発注時期、公開・実施希望日を順に並べます。動かせない制約(展示会の開催日、新商品の発売日など)がある場合は、その旨をはっきり書いておきます。
提案書に含めてほしい項目(実現方針、体制図、見積内訳、類似実績など)、提出形式と期限、何をどの重みで評価するか、質問の窓口と受付期間を記載します。評価基準を先に開示すると、提案の焦点が定まります。
以下の見出しをそのまま使い、各項目を埋めていけばオリエンシートとして機能します。パワーポイントなら十数枚、文書形式ならA4で3〜5ページが目安です。
「動画を作ってほしい」ではなく「商品の使い方が伝わらず、購入後の問い合わせが多い」と書く。前者なら動画の見積もりしか戻ってきませんが、後者ならFAQの再設計や同梱ガイドの見直しといった、より効く提案が出てくる可能性があります。既に手段が決まっている場合でも、そう判断した理由を添えておきます。
「おしゃれな感じ」「信頼感のあるトーン」は、人によって想像するものが全く違います。参考になる事例を数点提示し、「この事例のここが良い」「この方向は違う」と注釈を付けるだけで、デザインの手戻りは大幅に減ります。
以前試してうまくいかなかった施策と、そのときの数字は、提案側にとって非常に価値の高い情報です。開示しなければ、同じ施策が形を変えて提案されてくるだけです。体面を気にせず、事実として共有してください。
業界団体の規制、薬機法や景表法の制約、使えない表現、使用できない素材、社内で過去に否決された方向性。これらは提案が出てから伝えると、両者の工数が丸々無駄になります。最初に出しておくのが親切です。
最終的に誰が判断するのか、何をどの重みで見るのかを書いておくと、提案の焦点が定まります。「課題理解40点、クリエイティブ30点、実現体制と実績20点、費用10点」のような配点は、社内の合意形成にもそのまま使えます。
オリエンシートは送って終わりではなく、説明の場を設けることで価値が上がります。目安1時間、次の順で進めるとスムーズです。
複数社に声をかけている場合は、質問と回答を全社に共有するのが公平です。一社だけが持つ情報で提案の質が変わると、比較の前提が崩れます。
文書形式ならA4で3〜5ページ、スライドなら10〜20枚が目安です。ただし分量より、提案側が判断に必要な情報が揃っているかが重要です。解析データやブランドガイドラインなどの詳細は本体に詰め込まず、別添資料に分けると読みやすくなります。
伝えることを推奨します。予算が分からないと、規模感の合わない提案が混ざり、比較する工数だけが増えます。「この範囲内で最大の成果を出す構成を提案してください」という依頼の仕方であれば、優先順位の付け方に各社の差が現れ、むしろ選定の材料になります。
提案の前提になる情報は、NDAを締結したうえで開示するのが基本です。売上構成、顧客の定着率、過去の施策のコスト対効果などは、共有されているかどうかで提案の精度が大きく変わります。どうしても出せない情報は、範囲や傾向だけでも伝えると良いでしょう。
必要です。オリエンシートは比較のためだけの文書ではなく、依頼内容を確定させるための文書です。長い付き合いのある相手ほど「言わなくても分かるだろう」が発生しやすく、それが手戻りの原因になります。簡易版でも構いませんので、文書で渡す習慣をつけておくと安全です。
オリエンシートは、代理店や制作会社に「解決したい課題」と「満たすべき条件」を伝え、提案の精度を上げるための文書です。背景と課題、目的とKPI、ターゲット、依頼範囲、予算、制約条件、評価基準という骨格を押さえれば、形式にこだわらなくても十分に機能します。
押さえておきたいのは、手段を指定するのではなく課題を伝えること、形容詞を数値や事例に置き換えること、そして情報を出し惜しまないこと。まずは本記事のテンプレート構成をたたき台に、直近の案件に合わせて項目を足し引きするところから始めてみてください。


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