LTV計算式|SaaS・EC・B2B別の前提と算出例

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カテゴリ: CRM・LTV・顧客管理, マーケ基礎用語
著者: 与謝秀作
LTVの計算式は事業モデルで使い分けます。SaaSでは契約継続、ECでは購入の繰り返し、B2Bでは企業単位の更新・追加受注が価値を生みます。同じ式を全業種に当てはめず、顧客の単位と収益が生まれる時点を先に決めることが必要です。
売上と粗利益、観測値と予測値の基本整理は関連記事の「LTVの計算方法」で扱います。本記事は将来予測の前提と、事業モデルごとの計算例に絞ります。以下の金額、確率、継続率はすべて架空です。
モデル別に使う式と条件
事業 | 入口となる計算 | 使える条件 | 主な落とし穴 |
|---|---|---|---|
契約型SaaS | 月間ARPA×粗利益率÷月次顧客解約率 | 単価・粗利益率・解約確率が安定した単純モデル | 売上解約率との混同、低解約時の過大推計 |
EC | 同じ獲得群の期間内純売上・粗利益÷当初顧客数 | 顧客IDと同じ観測窓がある | 非購入者を分母から除く、観測値を生涯値と呼ぶ |
B2B | 各期の契約・追加受注の期待利益を合計 | 企業単位の契約と確率・提供原価を整理できる | 担当者数を顧客数とする、更新と追加受注の二重計上 |
Shopifyが説明する売上LTVのような購入単価・頻度・期間の積は、各要素の期間が整合していることが前提です。下記の試算は、その考え方を社内の意思決定用に具体化したもので、業種平均を示すものではありません。
SaaS:月次の単位を統一する
有料企業1社あたり月間売上ARPAが10,000円、粗利益率80%、月初の有料企業群からの月次顧客解約率4%とします。単純な粗利益LTVは10,000×80%÷4%=200,000円です。売上LTVなら250,000円になり、同じ「LTV」として混ぜてはいけません。
この式は、毎月の粗利益が8,000円で、各月末に4%が解約し、それ以外の変化がないという無期限のモデルに対応します。初月は全顧客が支払い、その後96%ずつ残ると仮定しています。アップセル、価格改定、解約の時期依存、割引、維持費の変化は含んでいません。
データが短い場合は、無期限の数字より24か月などの有限期間を使います。月末解約、初月全額支払いという同じ前提なら、24か月の期待粗利益は8,000円×(1+0.96+0.96の2乗+…+0.96の23乗)=約124,917円です。
月次解約率の仮定 | 無期限の単純粗利益LTV | 24か月の期待粗利益 |
|---|---|---|
2% | 400,000円 | 約153,688円 |
4% | 200,000円 | 約124,917円 |
6% | 約133,333円 | 約103,133円 |
解約率が小さくなるほど、無期限モデルは将来部分の影響が大きくなります。解約ゼロの短い観測期間から無限の価値を推計せず、期間上限と下振れケースを置きます。月次ARPAに年次解約率を割ることや、顧客解約率の代わりに拡張を含むネット売上解約率を無条件で使うことも避けます。
EC:顧客群と観測窓から積み上げる
同じ月に初回購入した200人について、獲得後12か月の純売上が960万円、売上原価が576万円だったとします。観測売上LTVは48,000円、観測粗利益LTVは19,200円です。期間内に購入がなかった月も含め、当初の200人を分母に残します。
将来を予測するなら、顧客が獲得されてから何か月目かにそろえて、購入者割合、購入者の注文数、純単価、粗利益率を見ます。例えば13か月目に当初顧客の10%が平均1回、8,000円を購入し粗利益率40%なら、その月の当初顧客1人あたり期待粗利益は0.1×1×8,000×0.4=320円です。各月を積み上げ、観測済みの12か月と混ぜずに表示します。
契約終了のないECでは、一定期間購入がないことを解約と扱うと季節購入を誤認する場合があります。商材の購入周期を踏まえ、安易に「顧客寿命=1÷解約率」を使わないでください。
B2B:契約ごとの確率と原価を置く
1社との初年度契約から得る粗利益を60万円、2年目更新確率を80%、更新時の粗利益を50万円とします。さらに、更新した企業の25%が追加サービスを購入し、その粗利益が20万円なら、2年間の期待粗利益は60万円+0.8×50万円+0.8×0.25×20万円=104万円です。
追加サービスの利益を更新契約の50万円に含めているなら、最後の4万円を再加算しません。営業担当者の感覚だけで確率を置かず、同種の契約群の実績や条件を使い、更新時期と提供リソースも記録します。会社に複数担当者がいても、企業単位のLTVでは1顧客として扱います。
割引・維持費・CACをどう扱うか
長期の価値では、各期の期待キャッシュフローを(1+期間あたり割引率)の期数乗で割る方法があります。月次と年次を統一し、割引率は社内の財務方針に合わせてください。粗利益からさらに専用の維持費を引く場合は、どこまで含む利益か名前で区別します。
本記事の例は獲得費CACを控除していません。投資余力を見る際に一度だけ差し引きます。LTVの中ですでにCACを引いた指標と比較するときに、もう一度引くと二重控除になります。
モデルは予測時点の版を保存し、後の実績で検証します。単価・継続率・粗利益率を毎回都合よく変えて過去の予測を上書きするより、どの仮定が外れたかを記録するほうが次の予算判断に役立ちます。
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施策と予算を継続して管理する
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