リテンション率とは?計算方法・チャーンとの違いと改善施策

リテンション率は、既存顧客がどれだけサービスを使い続けてくれているかを示す指標で、事業の安定成長を測るうえで欠かせないものです。新規顧客の獲得には既存顧客の維持の何倍ものコストがかかると言われるなか、リテンション率を正しく把握し改善することは、LTVの最大化や収益基盤の安定に直結します。本記事では、リテンション率の意味と計算方法、よく混同されるチャーンレート(解約率)との違い、そして実務で取り組める改善施策までをわかりやすく解説します。
リテンション(Retention)とは「維持」「保持」を意味する英単語で、マーケティング領域では「既存顧客の維持」を指します。リテンション率とは、ある一定期間において、顧客が解約せずにサービスを使い続けてくれている割合を表す指標です。「リテンションレート」「顧客維持率」「顧客定着率」「継続率」などと呼ばれることもあります。
リテンション率が高いほど、顧客が自社のサービスに満足し、継続的に価値を感じている状態だと判断できます。逆に数値が低い、または低下傾向にある場合は、顧客がサービスから離れ始めているサインであり、原因の分析と早期の改善が求められます。
リテンション率が経営指標として重視されるのには、明確な理由があります。
リテンション率は、必要な数値さえそろえばシンプルな計算式で求められます。代表的な計算式は次のとおりです。
リテンション率(%) = 継続顧客数 ÷ 新規顧客数 × 100
たとえば、新規顧客数が200人で、そのうち継続して利用している顧客が150人だった場合、リテンション率は 150 ÷ 200 × 100 = 75% となります。つまり、獲得した顧客の75%がサービスを継続している、という状態を表します。
より厳密に既存顧客の維持状況を測る場合は、新規顧客を除外した次の計算式が使われます。
リテンション率(%) = (期間終了時の総顧客数 - 期間中に増えた新規顧客数) ÷ 期間開始時の顧客数 × 100
この式では、期間中に新しく増えた顧客の影響を取り除き、「もともといた顧客がどれだけ残ったか」を純粋に測れます。目的に応じて、自社にとって意味のある定義を選ぶことが大切です。
リテンション率とあわせてよく登場するのが、チャーンレート(解約率)です。両者は表裏一体の関係にあり、対義語として捉えると理解しやすくなります。リテンション率が「どれだけの顧客が継続したか」を示すのに対し、チャーンレートは「どれだけの顧客が解約したか」を示します。
チャーンレートの基本的な計算式は次のとおりです。
チャーンレート(%) = 期間中に解約した顧客数 ÷ 期間開始時の顧客数 × 100
同じ母集団を基準にした場合、リテンション率とチャーンレートを足すと100%になる関係が成り立ちます。つまり、片方が分かればもう片方も把握できます。
リテンション率(%) = 100 - チャーンレート(%)
なお、チャーンレートには「顧客数」を基準とする顧客チャーンレートのほかに、解約による収益への影響を測る収益チャーンレート(MRRベース)もあります。高単価プランの顧客が解約した場合、顧客数の減少は小さくても収益への打撃は大きくなるため、両者を併せて見ることで解約の実態をより正確に把握できます。
算出したリテンション率は、単体で良し悪しを判断するのが難しい指標です。自社の過去の数値との時系列比較に加え、可能であれば業界のベンチマークと比較し、高いのか低いのかを相対的に評価しましょう。業種やビジネスモデルによって「健全な水準」は大きく異なるため、他業界の数値をそのまま当てはめないよう注意が必要です。
改善策を考える前に、なぜ顧客が離れていくのかを把握することが重要です。リテンション率が下がる代表的な原因には、次のようなものがあります。
リテンション率の改善は、「顧客に継続利用に値する価値を実感してもらう」ことが本質です。原因に応じて、次のような施策を組み合わせて取り組みます。
契約からサービス活用までをスムーズにつなぐオンボーディングは、初期離脱を防ぐ最重要ポイントです。チュートリアルやガイド、利用開始時のサポートを整え、顧客ができるだけ早く「成功体験(価値の実感)」にたどり着けるよう設計します。
メールやアプリ内通知、活用事例の共有などを通じて、顧客がサービスの価値を再認識できる接点を継続的に提供します。利用状況に応じたパーソナライズされた案内は、エンゲージメントの維持に効果的です。
ログイン頻度の低下や利用機能の減少など、解約につながる行動の変化を予兆サインとして捉え、リスクの高い顧客へ個別にアプローチします。解約してから対応するのではなく、兆候の段階で先回りすることが鍵です。
アンケートやNPS調査などの定量データに、解約者へのインタビューなどの定性データを組み合わせ、離脱の根本原因を立体的に把握します。「価格が高い」という表面的な声の背後にある「価値が伝わっていない」といった本質的課題を突き止め、プロダクトやコミュニケーションの改善につなげます。
ユーザー同士が活用ノウハウや成功事例を共有できるコミュニティは、顧客がサービスの価値を再発見し、活用度を高める場として機能します。顧客間のつながりはサービスへの愛着(ロイヤリティ)を育み、解約率の低下に寄与します。
リテンション率は「継続顧客数 ÷ 新規顧客数 × 100」などで求められ、既存顧客がどれだけ定着しているかを示す指標です。チャーンレート(解約率)とは表裏一体で、「リテンション率 = 100 - チャーンレート」の関係にあります。数値を継続的に観測し、オンボーディングの最適化、継続的なコミュニケーション、解約予兆の検知、顧客の声の反映、コミュニティ活用といった施策を通じて改善を図ることで、LTVの向上と安定した収益基盤の構築につなげられます。まずは自社の現在地を正確に把握することから始めてみましょう。