STPマーケティングの進め方|市場選定から施策へつなぐ記入例

STPマーケティングは、市場を分けるS、狙う対象を選ぶT、顧客にどう位置づけてもらうかを決めるPをつなぐ考え方です。用語を埋めるだけでは施策になりません。顧客について何が分かっていて、なぜその対象を選び、何を約束できるのかを一続きにします。
STPで決めることと、一枚にまとめる成果物
最初に作るのは、詳しい人物設定や競合の散布図ではなく、対象と提供価値を説明できるシートです。以下は作業の整理であり、必ずこの順序で一度だけ決めるものではありません。提供能力を調べてから区分を見直すこともあります。
段階 | 答える問い | 残す成果物 |
|---|---|---|
S:区分 | 課題や選択条件はどう違うか | 分類軸・対象範囲・根拠 |
T:選択 | どの対象なら価値を届けられるか | 選定理由・選ばない理由 |
P:位置づけ | 何を理由に選んでもらうか | 約束する価値・競合差・証拠 |
対象の年齢や肩書を詳しく書いても、購入の課題に関係しなければ判断材料は増えません。まずは選択が変わる条件を調べます。
準備:事実と仮説を分けて顧客を理解する
顧客への聞き取り、問い合わせ、購買の条件、利用の記録から、何を解決するために選ばれているかを集めます。「よく閲覧される」は観測事実ですが、「その機能を強く求めている」はまだ仮説です。検討だけで購入しなかった人の理由も確認しましょう。
以降は、月次報告を支援する架空のB2Bサービスを例にします。調査で確認するのは、報告頻度、作業担当、現在の手段、承認の流れ、導入権限です。若い担当者だから新しいツールを好む、といった想像で代用しません。
S:施策の違いにつながる軸で分ける
架空例では、顧客を「毎月同じ項目を手作業でまとめる」「案件ごとに内容が変わる」「すでに標準化できている」に分けます。前者には繰り返し作業、二番目には柔軟性、三番目には切り替え費用という異なる論点があります。区分によって提案が変わるなら、分類する意味があります。
分類を細かくしすぎると、対象が少なくなり別の施策を維持できません。到達できるか、違いを説明できるか、実行できるか、規模を見積もれるかを点検します。評価条件の考え方はOpenStaxの市場区分に関する説明でも整理されています。
T:魅力度と提供能力を比べて選ぶ
規模の大きさだけで対象を選ばず、課題の切実さ、接点、提供費用、必要な支援を比べます。架空例では、小規模チームの定型的な月次報告に対象を絞ります。複雑な連結報告が必要な企業は、現段階の提供能力に合わないため見送る、という判断です。
候補 | 課題・条件 | 判断と追加確認 |
|---|---|---|
定型報告の小規模チーム | 反復作業、担当が少ない | 候補。権限と移行負担を調査 |
案件ごとに報告が変わる組織 | 書式の自由度が必要 | 対応費用を確認するまで保留 |
複雑な連結報告が必要な企業 | 厳密な統制・多数の連携 | 現在の提供範囲では選ばない |
この表は実在市場の評価ではありません。選ばない理由まで書くことで、営業・制作が別々の顧客を想定するのを防ぎます。選択方式については対象市場の選び方も参照できます。
P:価値と証拠を一文にする
「高品質で便利」では違いが伝わりません。「定型報告を毎月まとめる少人数チームへ、確認の手戻りを減らす報告手順を提供する」のように、対象・課題・便益を結びます。その便益を提供できる理由も、試用時の記録や支援体制などで示します。
ポジショニング図に空白があっても、そこに需要や採算があるとは限りません。価格も選択条件の一つです。価格以外で戦うことをSTPの必須条件にはせず、ポジショニングの考え方を参考に、顧客の選択理由を確かめます。
4Pと小さな検証へつなぐ
架空例なら、提供内容は定型報告の試用、価格は支援範囲と対応費用を踏まえて設定、接点は対象へ届く説明会、訴求は報告作業の課題に合わせます。対象だけ絞り、誰にでも同じ広告を出す状態では整合しません。
- 試用前後で同じ報告作業を比較し、作業時間だけでなく確認漏れや支援時間も記録する。
- 購入しなかった理由、必要な機能、導入権限の不足を集める。
- 確認期限と見直し条件を決め、対象・価値・提供方法のどこを変えるか判断する。
分類と選択を詳しく整理するならセグメンテーションとターゲティングの違い、店舗とオンラインをまたぐ応用ならSTPをOMO施策へつなぐ設計例、個別の関係づくりならOne to Oneマーケティングへ進むと、作業の目的を分けられます。




