AI時代のCMOは何を判断するのか|自動化できる意思決定とできない意思決定
広告の入札は自動化され、レポートは自動生成され、クリエイティブも短時間で作れるようになりました。では、人は何を判断するのか。この記事では、マーケティングの意思決定を自動化できるものとできないものに分けて整理します。
最適化と目的設定は別物
この区別が、自動化の境界を決めています。
自動入札を例にすると分かりやすいです。CPAを下げるという目標を与えれば、人間より遙かに上手く入札を調整します。しかし、CPAを下げることが今の自社にとって正しい目標なのかは判断しません。
新規顧客を広げたい局面でCPAを下げる目標を置くと、取りやすい既存層に配信が寄ります。数字は良くなり、事業は進みません。
自動化が進む領域
手放してよい領域は、はっきりしています。
与えられた目標への最適化
入札調整、配信時間の制御、ターゲティングの絞り込み。こうした作業は、人がやる必要がもうありません。
結果の集計と可視化
各ツールから数字を集め、表にする作業。ここに人の時間を使っているなら、優先して自動化すべきです。
クリエイティブの量産と検証
パターンを変えて複数作り、反応を見て絞る。このサイクルは大幅に速くなりました。
ただし、何を訴求するかは別です。表現のバリエーションは自動化できますが、訴求そのものの候補を出すには、顧客の何に困っているのかを知っている必要があります。
異常の検知
数字が急に変わったときに気づく仕組み。人が毎日画面を見て探すより、確実です。
自動化されない領域
こちらが、これからCMOの仕事の中心になります。
何を目標に置くか
今期は獲得数を追うのか、単価を上げるのか、新しい市場を試すのか。
これは過去のデータからは出てきません。事業の状況、競合の動き、経営の意図を踏まえた判断です。
何をやめるか
数字が悪い施策を見つけるのは自動化できます。しかし、数字が悪いからといってやめるべきかは別の問いです。
立ち上げたばかりなのか、方向が間違っているのか、市場が変わったのか。同じ数字でも意味が違います。
誰に向けるか
既存の顧客層の中で反応の良い層を見つけるのは、自動化の得意分野です。
しかし、まだ接触していない層に向かう判断は出てきません。データは過去の接触からしか作られないからです。新しい市場を開く判断は、人が仕掛けるしかありません。
責任を取ること
広告の表現が問題になったとき、自動生成だったからという説明は通りません。
自動化するとしても、世に出す前に誰が見るのかを決めておく必要があります。
提案を採用するかどうか
見落とされがちですが、これも判断です。
ツールが提示する推奨設定を、そのまま採用するかどうか。多くの場合、推奨に従えば短期の数字は良くなります。
問題は、推奨が見ているのが短期の指標だけだという点です。既存層に寄せる提案は常に出てきますが、それを続けた先に新規の母集団が枯れることは提案に含まれません。
推奨に従わない判断をするなら、理由を残してください。後で見直すときに、その判断が正しかったかを検証できます。
自動化で増える仕事
自動化は仕事を減らすだけではありません。新しく発生する仕事もあります。
- 目標の設定と見直し:何を最適化させるかを決める作業が増えます
- 出力の確認:出てきたものを世に出してよいか見る工程が必要です
- 例外の対応:自動化された分だけ、例外が目立ちます
2つ目を軽く見ると、問題のある表現や事実誤認がそのまま公開されます。量が増えるほど、確認の仕組みが必要になります。
判断の精度を上げるには
自動化が進むほど、人の判断が結果を左右する割合は増えます。
判断の質を上げるのは、より多くのデータではありません。手元にある数字を、事業の文脈で読めるかどうかです。
具体的には、次の2つを揃えてください。
- 施策ごとの使用額と成果が、同じ場所で見える状態
- 過去の判断と、その理由が残っている状態
2つ目が抜けている組織は多いです。なぜその判断をしたのかが残っていないと、同じ失敗を繰り返します。
よくある質問
Q. マーケターの仕事は減りますか
作業は減りますが、判断の回数は増えます。作業に時間を取られていた頃は、判断を先送りしても目立ちませんでした。作業がなくなると、判断できないことがそのまま遅れになります。
