CMOの仕事とは?役割ではなく「意思決定」で理解する実務ハンドブック

CMOを調べると、「マーケティングの最高責任者」「戦略立案と実行を統括」といった説明が並びます。間違ってはいませんが、これでは日々何をしているのか見えません。この記事では、CMOが実際に下す意思決定と、その判断基準を整理します。
CMO(Chief Marketing Officer)は、マーケティング領域の最終判断を担う役職です。
部長との違いは、担当範囲ではなく判断の種類です。部長は与えられた目標をどう達成するかを決めますが、CMOは目標そのものと、そこにどれだけ資源を向けるかを決めます。
この違いが曖昧なままCMOを置くと、肩書が変わっただけでやることは変わらない、という状態になります。
最も頻度が高く、影響も大きい判断です。
前年実績を基準に配分すると、過去にうまくいったものに資源が集中します。これは安全に見えて、市場が変わったときに対応できなくなります。
見るべきは、これから伸びる余地がどこにあるかです。
すでにシェアを取り尽くしている領域に予算を足しても、伸びは限られます。逆に、小さいが伸び率の高い領域は、今の売上だけ見ていると切られます。
具体的には、施策を「今の売上を支えているもの」と「来年以降の売上を作るもの」に分けて、比率を決めます。後者がゼロの年が続くと、数年後に施策の選択肢がなくなります。
新しいことを始める判断より、こちらのほうが難しいです。
施策は放っておくと増え続けます。一つ一つは小さくても、積み上がると固定的な工数と予算を食います。
現場からは上がってこないからです。担当している人にとって、自分の仕事を止める提案はしにくいものです。
だからこそCMOが判断する必要があります。基準としては、次の2つが使えます。
1つ目で「今なら承認しない」となる施策は、続けている理由が惰性だけの可能性があります。
即時停止と縮小では意味が違います。顧客が使っているものは、止め方を設計しないと信用を損ねます。
止めると決めたあと、いつまでに、誰に何を伝えるかまでセットで指示してください。
採用の判断で、どのポジションから埋めるかは大きな分かれ道です。
実行する人が足りないのか、判断できる人が足りないのかで、採るべき人が違います。現場からは常に前者の要望が上がりますが、両方が足りないときは後者を先に埋めるのが定石です。
実行者を先に増やすと、判断の待ち行列が長くなり、人を増やしたのに進みが変わらないという状態になります。
外注の線引きもCMOの判断です。基準は単純で、判断を伴う工程を外に出さないことです。
作業量だけを見て外注を決めると、気づいたときには予算配分を代理店に提案してもらっている、という状態になります。
CMOの仕事のうち、成果を左右する割に語られない部分です。
施策の進捗を報告しても、他の役員には判断できません。リードが何件増えたと言われても、それが事業にとって良いことなのか判断する材料がないからです。
報告すべきは、使った金額と、それが何になったかです。
売上に直結しない施策でも、代替指標を置けば説明できます。指名検索数、新規問い合わせの増加、商談化率の推移。因果を証明できなくても、進んだかどうかを判定できる数字があれば十分です。
未達や失敗を会議の最後に回すと、意図的に隠したと受け取られます。
先に出して対応を示すほうが、結果として信用を保てます。この順序を守っていると、悪い数字を報告しやすい雰囲気が部門内にも広がります。
CMOが常に抱える緊張関係です。
今期の数字は常に迫ってきますが、そこに寄せ続けると、新しい顧客層やチャネルが育ちません。逆に中長期に寄せすぎると、目前の目標を外して信用を失います。
現実的な進め方は、中長期の枠を先に確保してしまうことです。余ったら回すという順序だと、永久に回ってきません。
マーケティングの仕事は、営業・商品・カスタマーサポートと重なります。
この境界を曖昧にしておくと、成果が出たときの帰属でもめ、出ないときの責任の押し付け合いが起きます。
最も揉めるのは営業との境界です。リードを渡す基準と、渡したあとの扱いを文章で決めておくと、後で揉めなくなります。
新しくCMOになった場合、最初に手をつけるべきは現状の把握です。
1つ目をやるだけで、やめるべき施策がいくつか見つかります。新しいことを始めるのは、この後で十分です。
予算の総額と目標の水準を決める権限があるかどうかです。与えられた予算を最適に使うのが部長、いくら使うべきかを経営に提案するのがCMOです。肩書だけ変えて権限が変わらない場合、実態は部長のままです。
役職として置く必要はありませんが、判断する人は必要です。社長が兼ねている場合も多く、それで問題ありません。問題なのは、誰も判断していない状態です。
権限の範囲を先に文章にしてください。いくらまでの予算を単独で決められるのか、人員の入れ替えはできるのか。ここが曖昧なまま招くと、判断のたびに交渉が必要になり、採用の意味が薄れます。
少人数なら実務を持つのは自然です。ただし、判断に使える時間が週の半分を下回ったら、手放しを検討する時期です。判断が止まると、部門全体の進みが止まります。
ここまで挙げた判断は、いずれも施策ごとの使用額と成果が見えていることが前提です。これが別々の場所にあると、判断のたびに収集から始めることになります。
Xtrategyでは、施策のスケジュールと予算・KPIを同一画面で管理できます。全施策を横断して見られれば、やめる判断も寄せる判断も早くなります。
CMOの仕事を理解するには、役割の一覧よりも、何を決めているかを見るほうが確実です。まずは今の自社で、この記事に挙げた判断を誰が下しているか確かめてみてください。空白になっているものがあれば、そこが課題です。