PMBOKの10の知識エリア一覧|実務でどう使い分けるか
PMBOKの10の知識エリアを調べようとすると、「第7版で廃止された」という記述に行き当たることがあります。しかし実務では今もこの分類が使われており、覚えておく価値はあります。この記事では、10の知識エリアの一覧と、版ごとの位置づけの変化を整理します。
最初に|知識エリアは現行版の体系ではない
前提を整理しておきます。
10の知識エリアは、PMBOKガイド第6版までの体系です。2021年の第7版でこの概念は廃止され、8つのパフォーマンス領域と12の原則に置き換わりました。
さらに第8版でも変更が入っています。原則は6つに、パフォーマンス領域は7つに再編され、加えてプロセスと重点分野が再導入されました。第7版が「抽象的で実務に落としづらい」という声を受けた形で、第6版までの具体性に一部戻った形です。
それでも覚える価値がある理由
廃止されたのなら覚えても意味がない、とはなりません。理由は3つあります。
- 実務では今もこの分類で会話が成立している
- 第6版を前提にした社内規定やテンプレートが残っている組織が多い
- 何を管理すべきかのチェックリストとしては、今も機能する
特に3つ目が実用的です。プロジェクトで抜けがちな領域を確認するなら、10という区切りは今でも使えます。
10の知識エリア一覧
第6版で定義されていた10領域です。
1. 統合マネジメント
他の9領域をまとめて、全体の整合性を保つ領域です。プロジェクト憲章の作成や、変更要求の判断がここに入ります。
2. スコープマネジメント
やることとやらないことを定める領域です。WBSの作成もここに含まれます。
3. スケジュールマネジメント
作業の順序と期間を決め、進捗を管理する領域です。第6版でタイムマネジメントから名称が変わりました。
4. コストマネジメント
予算を見積もり、使い方を管理する領域です。予備費の設定も含みます。
5. 品質マネジメント
成果物が要求を満たしているかを確かめる領域です。評価基準を先に決めることが中心になります。
6. 資源マネジメント
人や設備を確保し、配分する領域です。第6版で人的資源以外も含む形に拡張されました。
7. コミュニケーションマネジメント
誰に、いつ、何を伝えるかを設計する領域です。会議体や報告の形式を決めることが含まれます。
8. リスクマネジメント
起きうる問題を先に洗い出し、対応を決めておく領域です。マイナスのリスクだけでなく、好機も対象に含みます。
9. 調達マネジメント
外部から購入するものや、外注を管理する領域です。契約形態の選択もここに入ります。
10. ステークホルダーマネジメント
関係者を特定し、期待を把握して合意を取り付ける領域です。第5版で独立した、比較的新しい領域です。
実務での使い分け
10領域を均等に管理する必要はありません。プロジェクトの性質によって、重くなる領域が違います。
外注が多いプロジェクト
調達とスコープが重くなります。依頼範囲が曖昧なまま発注すると、後から追加費用の話になります。
部署をまたぐプロジェクト
ステークホルダーとコミュニケーションが重くなります。技術的には単純なのに進まない場合、大半はこの2領域が原因です。
前例のないプロジェクト
リスクとスケジュールが重くなります。見積もりの精度が上がらない前提で、余裕をどこに置くかを設計することになります。
チェックリストとして使う
最も実用的な使い方は、計画段階で10領域を一周することです。「このプロジェクトで調達は発生するか」「品質の判定基準は決まっているか」と順に問うだけで、抜けが見つかります。
経験のあるPMでも、得意な領域と苦手な領域があります。一覧を手元に置いておくと、自分の傾向に引っ張られずに済みます。
第7版で何が変わったか
知識エリアに代わって、パフォーマンス領域という概念が導入されました。
違いは、何を管理するかから、どういう状態を目指すかへの視点の移動です。知識エリアが管理対象の分類だったのに対し、パフォーマンス領域は成果を出すための活動領域として定義されています。
背景にあるのは、アジャイルな進め方の普及です。計画を固めてから順に実行する前提が崩れ、手順を定めるより判断の基準を示す形に変わったと考えると理解しやすくなります。
ただし第7版には、抽象的で実務に落としづらいという声がありました。第8版でプロセスが再導入されたのは、この反応を受けたものです。