マーケティング組織の作り方|役割・体制図・RACIの記入例

マーケティング組織を作るときは、組織図の箱を並べる前に、担う仕事と判断の範囲を決めます。誰が調べ、作り、確認し、結果を受け取るのか。ここが曖昧なまま人を配置すると、担当がいても決定待ちや二重確認が残ります。
本記事は、業務一覧、体制図の元になる役割表、RACIを使って責任を整理する手順です。BtoBのコンテンツ制作と営業への引き継ぎを例にしますが、マーケティングの範囲を商談獲得に限定しません。役職、時間、体制は説明用の架空例であり、推奨人数や必勝の組織モデルではありません。
自社が担うマーケティング業務の範囲を定める
自社のマーケティングが担う範囲を、顧客理解、価値の伝達、顧客接点、実行、評価などの業務として書き出します。新規獲得だけでなく、既存顧客への情報提供や商品部門への知見の還元も対象になり得ます。米国マーケティング協会の定義も、価値の創造・伝達・提供・交換を含む広い範囲を扱っています。
業務範囲 | 成果物・受け手の例 | 他部門との境界 |
|---|---|---|
顧客理解 | 調査メモを商品担当へ渡す | 営業・顧客支援と対象や利用目的を合意 |
情報設計 | 訴求と説明資料を制作担当へ渡す | 仕様・表現の確認先を決める |
施策実施 | 記事、配信、イベントを対象者へ届ける | 承認、費用、公開の権限を確認 |
評価 | 指標の定義と振り返りを責任者へ返す | 販売・顧客支援の情報との接続条件を決める |
「営業を支援する」だけでは仕事の境界が広すぎます。依頼を受ける条件、完成した成果物、渡した後の責任まで具体化してください。体制を決める前に、扱わない業務や他部門が最終責任を持つ業務も明記しておくと、後の依頼を判断しやすくなります。
業務を棚卸しし、役割と兼務を見えるようにする
現在の仕事を、肩書ではなく成果物と繰り返し頻度で棚卸しします。各行に主担当、確認する人、次の受け手、兼務、困る場面を置きます。空欄は無理に埋めず、決定が必要な項目として残します。
仕事 | 成果物・頻度 | 主担当 | 協力・受け手 | 兼務・未決事項 |
|---|---|---|---|---|
顧客の質問整理 | 質問一覧/月次 | A:企画担当 | 営業・顧客支援 | 分析業務と兼務 |
記事制作 | 確認済み原稿/案件ごと | B:編集担当 | 商品担当 | 画像の権利確認先を合意する |
配信準備 | 対象と配信内容/配信ごと | C:運用担当 | 営業・編集 | 配信停止の判断権限を確認 |
指標定義 | 定義書/導入・変更時 | 未割当 | 事業責任者・情報管理担当 | 所有者の決定が必要 |
兼務そのものが問題とは限りません。同じ期間に要求される時間と、判断を止めたときの影響を確認します。例えば共通業務に週10人時を割り当て、担当者が週12人時使えると仮定すると、差分は2人時です。計算対象は同じ週の作業で、会議や休暇は利用可能時間から除いています。追加依頼や引き継ぎの余力まで保証する値ではありません。
本人が考える責任と周囲が期待する責任の差は、Atlassianの役割と責任の確認手順も参考になります。人数を増やす前に、依頼の入口、重複作業、決裁権限、未使用の成果物を確認してください。日常の優先順位や仕事量の調整はチーム管理の運用例につなげます。
組織モデルを事業構造と連携負荷で比較する
組織モデルは、事業や顧客の違い、専門性を共有する利点、部門間の調整負荷で比較します。人数だけから「機能型が最適」「一定人数になったら分割」と決めるのは避けます。同じ会社でも、調査や運用を共通化し、商品ごとの企画担当を置く組み合わせが考えられます。
構造の案 | 合う条件の例 | 調整上の注意 | 先に決める境界 |
|---|---|---|---|
機能別 | 専門性を複数施策へ共有したい | 依頼の待ち列が偏りやすい | 優先順位を決める責任者 |
商品・顧客別 | 対象の違いが企画や表現に強く影響する | 同じ作業や知見が分散しやすい | 共通化する仕事と共有方法 |
共通基盤+個別実行 | 計測や制作基準をそろえながら実行を分けたい | 共通部門と実行側の権限が曖昧になりやすい | 例外の判断者と依頼条件 |
比較には現在の困りごとを使います。決定待ち、引き継ぎ回数、作業の重複、専門家への依頼集中などです。構造変更だけで問題が解消するとは限らないため、まず一つの業務で責任の置き方を試し、調整が減ったかを確認しましょう。
指揮命令と部門間連携を分けて体制図にする
体制図では、指揮命令・評価の報告経路と、業務上の連携を分けます。実線は報告、点線は連携など、凡例を必ず添えてください。箱には役割、別の欄には現在の担当者を書くと、異動時も責任の設計を残せます。次の表は図へ転記できる元データです。
役割 | 現在の担当・架空例 | 報告先 | 連携先 | 不在時の扱い |
|---|---|---|---|---|
マーケティング責任者 | A | 事業責任者 | 営業責任者・商品責任者 | 委任範囲内は副責任者 |
編集 | B | マーケティング責任者 | 商品確認・運用 | 指定した編集副担当 |
運用 | C | マーケティング責任者 | 編集・情報管理 | 停止の連絡先を別途指定 |
営業窓口 | D | 営業責任者 | マーケティング責任者・運用 | 営業側の代替窓口 |
連携先が多いことは、その人が全件を承認するという意味ではありません。通常の相談窓口と、最終の決裁権限を分けて記します。担当者が二つの部門から依頼を受ける場合は、優先順位の衝突を誰が調整するかを決めます。案件の全体責任と次アクション担当を分ける記録には案件管理台帳の項目例が役立ちます。
RACIの記入例で実行・決裁・相談・報告を決める
RACIは、Rを実行責任、Aを最終責任・決裁、Cを事前相談、Iを必要な情報共有として整理する方法です。AsanaのRACI解説を参考に、ここでは一つの行に一つのAを置き、Rは実行を主導する役割として記します。同じ人がAとRを兼ねることもあります。
対象となる仕事・判断 | マーケ責任者 | 編集 | 運用 | 営業責任者 | 商品担当 |
|---|---|---|---|---|---|
記事の公開判断 | A | R | I | I | C |
合意済み予算内の配信準備 | A | C | R | I | I |
見込み顧客の引き渡し条件を決定 | R | I | C | A | C |
月次指標の定義を更新 | A | C | R | C | C |
これは架空の分担例です。予算の新規承認、契約、法務やセキュリティの必須確認は、この表だけで省略できません。社内規程の承認者と必要な確認を照合し、対象の仕事を細分化するか、例外を別に記録します。Cには判断に必要な意見を求める時点を、Iにはいつ何を知らせるかを添えてください。
「みんなが責任者」を避ける一方、Aだけに作業を集めないことも大切です。Rが必要な情報を集め、Cの回答期限をそろえ、Aが判断できる形で出します。合意した担当と月次の実施予定はマーケティングカレンダーへ結びつけると、体制が実務に反映されます。
役割の空白と権限の例外を更新する
役割表は採用や異動のときだけでなく、業務の追加、商品変更、重大な例外の後にも見直します。空欄、複数のA、権限のないA、名義だけのR、回答を求める時点が不明なCを確認します。
- 代表的な一業務を選び、現在の担当者と受け手で表を埋める。
- 未担当や認識の違いを決定事項として切り出す。
- 権限、必要な確認、代替先を社内ルールと照合する。
- 次の案件で試し、迷った判断と例外を記録する。
- 責任者が変更点と適用日を共有し、古い版の参照を整理する。
うまくいかない場合は、表を増やす前に行の粒度を直します。「マーケティング全般」は広すぎ、「メールの一文字修正」は細かすぎることがあります。成果物や重要な判断を単位に置き、決めた役割と実際の行動が合うよう更新してください。




